東京出張手控え・マスクで会食 中部企業、再開慎重に

新型コロナウイルスによる国や自治体の緊急事態宣言が解除された。愛知県など中部でも6月1日までにスポーツジムなどへの休業要請が全面的に取り下げられ、不要不急の外出要請もなくなる。中部企業の間では出張や接待の再開の動きが広がる一方、感染の第2波に備えて時短営業を続けるなど「新常態」への対応を急いでいる。

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マスク姿で通勤する人たち(29日、名古屋市中村区)

東邦ガスは28日、これまで原則自粛としてきた国内出張を必要性などを考慮して認めることとした。東京や北海道など感染者の多い地域への出張は自粛を続ける。オークマも国内出張を状況に応じて判断するように基準を緩和した。一方、日本特殊陶業は6月末まで国内外の出張の原則禁止を続ける。

愛知県は都道府県間をまたいだ不要不急の移動の自粛要請を1日に解除する。ただ、新規感染の増加傾向が直近も続いた北海道と東京など首都圏1都3県との間の移動は慎重な検討を求めており、出張の全面再開はしばらく先になりそうだ。

新型コロナの感染拡大を受けて取引先との懇親会などは一斉に中止となった。中部電力は1日、業務上必要な取引先との会食を解禁する。食事中以外はマスクの着用を徹底するなど感染防止にも努める。JR東海の金子慎社長は29日の会見で「(会食や出張は)徐々に解除するが、3密など感染防止に気をつけながら対応する」と話した。

緊急事態宣言の解除後も休業要請が続いたカラオケやスポーツジムは6月1日以降、対象から外れる。愛知県内でスポーツジムを24店運営するアイレクススポーツライフ(愛知県豊川市)は同日から営業を再開する。間隔を開けられるようトレーニングマシンや更衣室のロッカーなどを間引いて配置し、利用者にはマスク着用を必須にする。

アトムが運営する「カラオケ時遊館」は全店で営業を再開したが入室は1室3人までに制限する。客の入れ替え時はマイクを分解してブラシを使い水と洗剤で洗浄する。

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名古屋市内の百貨店は対応が分かれる。名古屋三越は1~2時間短くしていた営業時間を6月1日から通常に戻す。JR名古屋高島屋は一部のテナントを除きすでに19日から通常営業に戻している。一方、松坂屋名古屋店は6月1日以降も時短営業を当面続ける。「段階的に通常営業に戻す」(担当者)という。

ワシントンホテルは休業中の9都府県13店舗の営業を6月1日から再開する。客室の利用がすぐに戻らないことを見込み、一部店舗で実施してきたテレワーク用に客室を貸し出すサービスを全店に拡大する。

交通機関も運行再開などが広がる。JR東海は1日から東海道新幹線の定期列車の全てを運行再開する。名鉄バスは名古屋―高山(岐阜)間などの長距離高速バスを順次再開させているが、総じて新型コロナの感染拡大前の3~4割の便数にとどめている。中部国際空港(愛知県常滑市)は6月1日時点の国内線の就航便数が1日あたり23便と前月から2便増える。過去最低だった5月から増えるが、増便数は小幅にとどまる。

■消毒や換気徹底 愛知県、事業者に要請

 愛知県は29日、営業を再開したスポーツジムをはじめとした事業者向けに感染予防ガイドラインを発表した。ジムの場合、利用者ごとの機器・設備の消毒、換気の徹底、せきなどによる飛沫の防止措置を求めた。業種共通の対策として、最低1メートルの社会的距離の確保、従業員や客への保健衛生対策の徹底、共用物の衛生対策の徹底を例として挙げている。
 ただ、北九州市で再び感染が拡大するなど、新型コロナの脅威が消えた訳ではない。第2波に備え、愛知県は「新規感染者」や「入院患者数」など3つの独自指標をつくった。大村秀章知事は「これからは(対策を)きつく締めたり、緩めたりといったことが必要になる」との考えを示す。指標を基に感染拡大リスクを判断し、必要があれば再び県内事業者に休業要請を出す構えだ。

(湯浅兼輔、小野沢健一)