9月入学「今年度・来年度の導入困難」 自民WT、見送り大筋了承

自民党のワーキングチーム(WT)は29日、学校の始業や入学時期を変える「9月入学」に関する提言をまとめ、大筋了承した。教育現場の混乱などに配慮し「今年度・来年度のような直近の導入は困難」と明記した。週明けに正式に決め、6月上旬にも政府に申し入れる。

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自民党の9月入学に関する会合であいさつする柴山昌彦座長(29日、党本部)

提言は9月入学に関し、国民的合意や実施にあたって一定の時間を要すると指摘した。2020年度や21年度からの導入は見送り「引き続き、広く建設的に議論を行うべきだ」と促した。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で休校が長引いた子どもの学習機会をどう保障するかを優先課題に挙げた。「あらゆる手段を使って、最大限その回復を図る必要がある」と強調した。

柴山昌彦座長も会合で「開校が遅れて困っている学生にどのような学びの保障をするかが極めて重要だ」と主張した。

具体策として20年度の修学期間を2週間から1カ月程度延ばす特例措置を検討し、20年度の大学入試の日程も後ろ倒しするよう求めた。感染の第2波、第3波が生じれば特例措置をさらに延ばすなど柔軟に運用するよう要請した。

29日のWTで入学時期を半年ほど後ろ倒すことで実現する9月入学に反対の意見が相次いだ。

前倒しする形での9月入学の実現には米欧などに制度を合わせれば大学の国際化につながるとの意見も多い。提言でも「国際化への対応のみならず、社会変革・教育改革を実現していく契機となり得るなど、意義は非常に幅広い」と評価した。

新型コロナの問題に端を発した学習機会の確保という観点とは別に、政府・自民党内に議論の場を設け、導入の可能性を検討していく。

萩生田光一文部科学相は29日の記者会見で9月入学について「学校再開で授業や行事が実施できるなら、直ちに導入を結論づけることはない」との見解を示した。感染の第2波が生じる可能性にも触れ「引き続き検討は続けたい」とも述べた。

9月入学を巡っては17人の知事有志が4月28日に導入を要請する共同メッセージを発表した。首相も翌29日に「前広に様々な選択肢を検討していきたい」と発言し、政府内で関係府省の次官級が協議を始めていた。

制度移行の複雑さや移行期間に多くの待機児童が発生しかねないといった懸念が生じ、自民党内から慎重な検討を求める意見が出ていた。こうした動きを踏まえ、首相は5月25日の記者会見で「拙速は避けなければならない」と語った。