東北電力、構造改革を加速 設備管理サービスなど外販へ

東北電力が構造改革を加速している。本業の電力供給事業でデジタル技術を使った効率化を一層進めるほか、そこで培ったノウハウをサービスとして製造業に外販する。2020~30年度の中長期ビジョンでは、24年度までを事業モデル転換期と位置づける。電力自由化に伴う競争激化に加え、新型コロナウイルスの影響で電力需要が停滞する中、電力販売に依存した構造からの転換も進める。

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東北電力は全ての火力発電所に運用効率向上のためのシステムを導入した(写真は仙台市の新仙台火力発電所)

東北電は3月までに8つの火力発電所の16基で、運用効率の向上に役立つデジタル技術を導入した。その一つは、あらゆるものがネットにつながる「IoT」を活用し、火力発電の熱効率低下を抑制するシステムだ。

熱効率が良好なときのボイラーやタービンの温度や圧力などのデータを基準値として設定。実際の運転データと比較することで効率が低下している要因を特定する。結果を踏まえ、運転員は燃料などの運転条件を変更する。出力が100万キロワット級の液化天然ガス(LNG)の火力発電では、0.1%の熱効率の向上で年間1500トンの燃料削減効果があるという。

同時に導入した設備の異常の兆候を検知するシステムは外販にも乗り出す。同システムでは、過去のビッグデータからボイラーなどが正常に稼働しているときの温度や圧力の数値を算出。これらと実際の運転データを比較し、差が大きくなった場合に異常を伝える。他の製造現場でも、正常な設備の稼働を支えるシステムとして活用できると考え、21年ごろまでの事業化を進める。

販売は東北6県や新潟県での展開を想定する。28日記者会見した同社の樋口康二郎社長は「(東北と新潟における設備管理サービスの)市場規模は50億円程度あり、10%ぐらいのシェア獲得を目指す」と語った。同社は火力発電所の建屋内の巡視点検作業に自律飛行型のドローンを活用する実証実験を進めており、こちらも他の設備産業への外販を検討している。

新型コロナの影響で足元では電力需要の停滞が鮮明だ。5月(27日時点)の東北6県と新潟県の電力需要は、前年同期比で6%減と緊急事態宣言が解除されてもなお影響が続いている。旅館や学校のほか、製造業では自動車関連などで販売量が減少しており、本業の電力供給事業の効率化は待ったなしだ。

ただ、樋口社長は新型コロナ感染拡大に伴う生活様式の変化について「中長期ビジョンとベクトルが合っている」と語る。働き方では、テレワークの定着で都市への一極集中から地方への分散が進み、再生可能エネルギーなどを活用したエネルギーの地産地消がさらに進むと見る。

同社は各地の再生エネや蓄電池、電気自動車(EV)などをネットワークで制御し、大型発電所のように運用させる「仮想発電所(VPP)」の構築を目指している。こうした新規事業への投資拡大のためにも、まずは本業のコスト競争力を高めたい考えだ。