シャオミは日本市場をどう攻略するか?――日本での展開から5G端末の話まで
by 北川 研斗シャオミは、日本で新たに2機種のスマートフォン「Redmi Note 9S」と「Mi Note 10 lite」をリリースすることを明らかにした。2019年にリリースされた「Mi Note 10」は1億画素のメインカメラやスペックの割に廉価な値段を実現していることなどが話題となった。
今回は、Mi Noteシリーズの新ラインアップに加えて同社の最量販ブランドとなるRedmiシリーズの機種も加わることになる。シャオミは今後、日本でどのような展開を描いているのか?
グローバル部門で東アジア地域のゼネラルマネージャーを務めるスティーブン・ワン(Steven Wang)氏と副ゼネラルマネージャーのジユアン・ザン(Zhiyuan Zang)氏に聞いた。
幅広いニーズに応えるラインアップ
――今回、日本での第2弾としてなぜこの2機種が選ばれたのでしょうか?
ワン氏
Redmi Noteシリーズは我々の製品の中でも最もコストパフォーマンスに優れる製品です。グローバルでの販売実績もありますから、日本でも展開できればと考えています。昨年、Mi Note 10を日本で発売しました。今回の「Mi Note 10 Lite」はその点で日本のユーザーに認知度が高いかと思います。
Mi Note 10はハイエンド、Mi Note 10 Liteはミドルレンジ、Redmi Note 9Sはエントリーモデルという展開になっています。
――さまざまな消費者のニーズに応えられる展開になりますね。しかしMiブランドとRedmiブランドが混在します。棲み分けは可能ですか?
ワン氏
それぞれのシリーズは、目指す方向性が違います。Miブランドでは、デザインや機能を重視したプレミアムな路線。Redmiブランドでは、コストパフォーマンスを追求しています。ですから、それほど障壁にはならないでしょう。
――日本でも販売台数を増やしていくとなると、リアル店舗も必要になってくるのではないでしょうか?
ワン氏
具体的な販路については、発表の場を待っていただければと思います。しかしながら、Redmiは市場で最もコストパフォーマンスに優れていると信じています。店舗だけではなくオンラインの販路も拡大していきます。
――なるほど、発表を楽しみにしています。
カメラにこだわりを見せるシャオミ
――今回発表の2機種について、開発で大変だった部分はどこですか?
ワン氏
Redmi Note 9Sについてはなるべく高い性能を保ちながらも廉価な価格を維持することに苦労しました。特にサプライチェーンにおいて、高い性能を維持しつつも価格を抑えるというのは非常に苦労しました。
Mi Note 10 Liteでは、Dot Display採用のスクリーンやクアルコム製の7xxシリーズチップセットを採用できたこと、さらに48MPのカメラも搭載できましたし、我々は非常に良い選択をしたと思っています。
Redmiについては、ゼロからデザインをしなおしてまして、とてもこだわった部分です。
――ラインアップの豊富さや価格の安さにはやはり関係があるのでしょうか? シャオミならではの秘密を教えて下さい
ワン氏
コスト削減のために、効率的な経営を重視しています。シャオミはスマートフォンメーカーとしては他社と比較しても最大規模です。また、コスト削減においてはスケールメリットも重要です。たとえば1台しか販売できなければ10万ドルくらいの価格になってしまうけれども、10万台売れれば1台1ドルで良い、といった形です。
――となると、日本市場にローカライズされたモデルの発売などは検討していないですか?
ワン氏
周波数などは対応させています。そのためにメインボードは日本向けに変更されています。楽天モバイルのネットワークで試験もしており、対応できています。ほかのキャリアとも同様の試験を実施しています。
ただ、FeliCaなどについては、日本でのみ普及しているものなので、その辺りは日本人エンジニアしかわからないかもしれない。しかし、実現に向けて取り組んでいるところです。
――両機種のカメラの構成はどのようにして決定されたのでしょうか? 超広角、広角、望遠、深度センサーという結論に至った決め手を教えて下さい
ワン氏
社内で検討した結果、この組み合わせが最も競争力を持てると判断しました。高解像度なメインカメラは普段遣いでより高精細な写真を撮影できますし、広角レンズは旅行などで景色を撮るのに便利です。AIの調整で人物撮影は非常にきれいに写すことができるでしょう。深度センサーも進化しています。たとば、人の前後にあるシャボンの泡が浮かんでいる写真なら、それらの距離もしっかり認識できていますから、より自然な仕上がりになっています。マクロレンズは、これがなくては撮れない写真が撮れるでしょう。
カメラについては、Mi Note 10 LiteもRedmi Note 9Sについても同じ想いで仕上げました。
――MIUIで注目してほしい機能などはありますか?
ワン氏
カメラはとても工夫しました。優れた機能はどれ? と言われればカメラが一番だと思います。スローモーションは、960fpsで非常に鮮やかに撮影できます。4Kカメラや夜間撮影に最適なナイトモードもありますし、被写体によって最適なモードに切り替えるAI認識も備えています。
特にナイトモードでは、4つのピクセルを合わせて1つのピクセルとすることで、暗い夜間でも明るく綺麗に撮影できる機能も備えています。
カメラはMIUIの機能のひとつです。MIUIは可能な限り、シンプルに使えるようにデザインしました。しかしその一方で、ヘビーユーザーにも満足してもらえるようさまざまな機能を用意しています。
5G端末の日本展開は?
――シャオミでは今年、5Gモデルを数多く出していくとグローバルで表明しているそうですが、それらは日本でも展開していく予定はありますか?
ワン氏
シャオミが、世界でもトップのスマートフォンメーカーになれた要因としては、市場のトレンドに応えられたことが大きいと思います。日本においての今後のトレンドは「5Gへの転換」「ハイエンドからミドルレンジへの転換」という2つに加えて、「SIMフリー」への転換があります。
我々は、安くて良い5Gスマートフォンをお届けしたいと考えています。KDDIからは「Mi 10 lite 5G」が発売予定です。最初の5G端末への転換は、キャリアモデルから始まるでしょう。ですから我々もキャリアと共に取り組んでいるのです。
一方で、SIMフリー端末にいつ頃5G化のトレンドが来るかは見通しが難しいです。ネットワークがまだ発展途上にあるため、SIMフリーでも5G化が進むには、もう少し5Gエリアが広まってからだと思います。
今年は、5Gモデルについてはキャリアモデルのみのリリースで、SIMフリーについては4Gモデルを展開していく予定です。日本の4大キャリアがそれぞれ異なるバンドを使用しており、その上でミリ波もSub-6も混在しています。これらの要素を1台のSIMフリー機でカバーするのは簡単ではありません。
――5月26日には、割安な価格で5Gに対応する「Redmi 10X」シリーズが発表されていますね。つい期待してしまいます。
ワン氏
シャオミは、4G時代同様に5G時代でもアドバンテージを持っています。効率の面でもそうですし、販売のボリューム大きく、テクノロジーパートナーやサプライヤーとも大きなスケールを築いています。5G時代でも我々にご期待ください。