宇宙は“特別な場所”ではない:宇宙開発は製造業からインフラ・情報産業へ――インターステラテクノロジズとアクセルスペースが描く宇宙ビジネスの展望 (1/2)
北海道大樹町の宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズ(IST)と、超小型人工衛星事業に取り組むアクセルスペースのトークセッションが、4月20日にオンラインで開催された。ISTのこれまでの道のりと、今後の宇宙開発の展望などを書き下ろしたISTファウンダーの堀江貴文氏の著書『ゼロからはじめる力 空想を現実化する僕らの方法』(SB新書)の出版を記念したものだ。セッションの模様をお届けする。
by 田中圭太郎,ITmedia北海道大樹町の宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズ(以下、IST)と、超小型人工衛星事業に取り組むアクセルスペースのトークセッションが、4月20日にオンラインで開催された。ISTのこれまでの道のりと、今後の宇宙開発の展望などを書き下ろしたISTファウンダーの堀江貴文氏の著書『ゼロからはじめる力 空想を現実化する僕らの方法』(SB新書)の出版を記念したものだ。
登壇したのは、ISTの稲川貴大代表取締役社長とファウンダーの堀江貴文氏、それにアクセルスペースの中村友哉代表取締役CEO。ISTが開発を進めている超小型の人工衛星打ち上げロケット「ZERO」が、アクセルスペースの超小型衛星を頻繁に宇宙に運び、新たなインフラを生み出すといった数年後の宇宙ビジネスの姿を語り合った。トークセッションの模様をお伝えする。
民間による宇宙事業は本格的なビジネスへ
オンラインで開催されたトークセッションは、ISTの稲川氏と堀江氏、それにアクセルスペースの中村氏の3人がそれぞれ別の場所から参加した。
宇宙ベンチャーのISTは、2019年5月に観測ロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機」の打ち上げに成功。日本の民間企業として初めて、世界でも9社目となる宇宙到達を果たした。一方のアクセルスペースは超小型衛星開発に取り組む大学発のベンチャーで、中村氏が08年に設立している。
堀江氏は、18年6月に打ち上げ直後に落下・炎上した「MOMO2号機」の写真をバーチャル背景にして登場。第二次世界大戦中から始まったロケット開発の歴史と、長い間国家主導で宇宙開発が進められてきた経緯に触れ、以前は開発に多額の費用がかかっていたものの、現在では民生品をある程度使うことで大幅なコストダウンが可能になったと説明した。
中村氏は、大学でのものづくりから出発した超小型衛星の開発が、技術も向上し、社会に役立つツールとして認められつつあると手応えを述べた。そのうえで、「われわれが築き上げてきた技術がいままさに花開こうとしている」と、民間による宇宙事業が日本でも本格的なビジネスになろうとしていることを強調した。
アクセルスペースが進める小型衛星事業の未来
ISTでは観測ロケット「MOMO」の開発と並行して、超小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の開発も、23年ころの打上げを目指して進めている。稲川氏は、安価な小型衛星を複数打ち上げて互いの衛星をネットワーク化する「衛星コンステレーション構想」を進める企業が、世界中でどんどん出てきているとして、そのプレイヤーの1社であるアクセルスペースがどのような構想を持っているのかを中村氏に聞いた。
中村氏は、08年の起業以来、特定の顧客向けに専用衛星を開発してきた一方で、初の自社向け超小型衛星を18年末に打ち上げて運用をしていることを明かした。22年までにまず10機体制にして、ゆくゆくは数十機の人工衛星を軌道上に打ち上げ、高頻度に世界を観測していく新しいプラットフォーム作りに取り組む考えを示し、次のように語った。
「簡単に言えば衛星画像や、そこから得られる情報を顧客に提供する事業です。地球全体を俯瞰して、高頻度に観測することで、いま地上で何が起きているのかを知り、過去のトレンドから未来を予測できるようになります。インターネットによって起きたような社会の変革が、衛星コンステレーションによる地球観測でも起きるのではないでしょうか。新しいビッグデータの1つとして、事業を育て上げていきたいと思っています」