「留学生のみ成績条件は問題」 困窮学生「給付金」で人権団体が文科省に改善要請

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 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、経済的に困窮した学生のために政府が創設した「学生支援緊急給付金」について、外国人を支援する人権団体などは29日、「留学生のみに成績条件が設けられている点など問題がある」として、文部科学省に改善を求める要請を行った。

 「学生支援緊急給付金」は、新型コロナの感染拡大を受け、アルバイトの収入がなくなるなどの影響で学業継続に支障をきたす学生を支援することが目的。19日、政府が閣議決定した。対象は、国公私立大学(大学院を含む)・短大・高専・専門学校(日本語教育機関を含む)の学生のうち、家庭から自立してアルバイトで学費などを賄い、新型コロナの影響で収入が大幅に減少、学生生活を続けることが困難になっている学生。給付額は1人10万円(住民税非課税世帯の学生は20万円)。支給総額は約530億円を見込んでいる。

 この日、文科省に要請を行ったNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)など5団体は「制度創設自体は評価する」としたうえで、①対象が約43万人と極めて少ない②留学生だけに成績上位の要件を設けているのは国籍差別にあたる③朝鮮大学校や外国大学日本校も対象に含めるべきだ――などとする声明を25日に公表、改善を求めていた。

 文科省への要請後、参院議員会館で記者会見した移住連の副代表理事、鈴木江理子国士舘大教授は「他のコロナ関係の給付金と違って43万人の枠をつけられることで、同じように困窮している日本人、外国人学生の間で分断が起きてしまう」と批判した。

 会見には外国籍の学生、留学生ら3人が出席。ネパール出身で上智大大学院2年のダリマ・タマンさん(23)は、レストランでアルバイトをしながら学費を賄っているが、3月末から新型コロナの影響でシフトを減らされ、学費の支払いに不安を抱える。自身は成績要件をクリアできる見通しだが、「生活費・学費のために勉強に集中できず、いい成績を取れない学生もいる。日本人だと成績は関係ないのに、留学生はだめというのは差別だと思います」と訴えた。【井田純】