発言者の特定「それほど意味があるとは思ってない」? 速記録は真っ黒、議事録なしの専門家会議
新型コロナウイルス対策を話し合う政府の専門家会議について、速記録の情報公開請求をしたところ、委員の発言部分が「真っ黒」な状態で開示されたとブログで報告があり、論議になっている。
専門家会議には議事録がないことも分かっており、政府は、「作成すると自由な意見が阻害される」などと説明している。こうしたことは、「歴史的緊急事態」にふさわしいのかどうか――。
内閣官房から請求者に「議事概要でよいか?」との電話
「また『のり弁』かよ」「コロナ対策の会議で何をそんなに隠すことが......」。専門家会議の2回目開催について、速記録が「真っ黒」だったことが2020年5月29日にツイッター上で報告されると、こんな驚きの声が上がった。
情報公開請求をしたのは、新型コロナの現状についてブログを書いているお笑いコンビ「おしどり」のマコさん(45)だ。マコさんは、震災後にまず原発について発信を始め、19年夏の参院選比例区で立憲民主党から立候補したこともある。
ブログによると、マコさんは、2月25日にそれまで3回あった専門家会議の議事録について、内閣官房に情報公開請求をした。3月4日に内閣官房から「議事概要でよいか?」との電話があったが、あくまで議事録を求めたところ、4月28日に2回目開催の速記録について開示の決定を受けた。しかし、「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ等があるものが記録されている部分」については非開示となっていた。
5月6日に速記録の開示請求をすると、5月28日に38ページの文書が送られてきたが、委員の発言部分は黒く塗られ、司会進行と資料説明だけが開示されていた。
委員の1人は「公開して発言に責任を持った方がいい」
このことについて、マコさんは、「箇条書きの議事概要では議論は全く見えてこない」として、「政策に寄与する議論がどのようなものだったか、検証が必要なのだ。『非公開でないと率直な議論ができない』のなら、政策に寄与すべきでない」とブログで批判している。
2回目以外の速記録も情報公開請求をしており、内閣官房からは、新型コロナ対応の多忙による特例で遅れるものの、7月21日までに可能な部分を、9月30日にすべてを開示決定すると連絡があった。
マコさんは、専門会議が5月14日に行った記者会見にスカイプで参加している。そこで、委員が発言の公開を望んでいないのかと質問すると、委員の1人、岡部信彦川崎市健康安全研究所所長は、「私たちも誰がどういう発言をしたかっていうの責任を持った方がいいので、できればそういう風な方がありがたい」と答えた。一方、厚労省の担当者は、「1人1人どういったご発言をされたかを特定することに、それほど意味があるとは思っておりません」と説明していた。
「政策の決定又は了解を行う会議等」には該当しない
新型コロナ対策については、政府は、3月10日の閣議で、行政文書の管理における「歴史的緊急事態」に初めて指定した。これは、震災後に文書管理の教訓から政府のガイドラインに規定されたものだ。
専門家会議では政府が議事録を作っていないことが5月28日に報道されたが、菅義偉官房長官は、29日の閣議後会見で、歴史的緊急事態に対応する専門家会議としては、議事録作成が求められるガイドラインの「政策の決定又は了解を行う会議等」には該当しないとの見方を明かした。そのうえで、「専門家に自由かつ率直に議論していただくために、発言者は特定されない形だ」と説明した。
議事録がないことについては、著名人も加わってネット上で様々な意見が交わされている。
疑問や批判も多く、「これでは会議の内容もまともだったのか疑わざるを得ない」「責任逃れでもさせたいのでしょうか?」「記録は今後の検証にとって必要不可欠」といった意見が出ている。一方で、「議事録残しますなんて言ったら本音で率直で自由闊達な議論できない」「『議事録を取る会議と取らない会議』は内規で決められてて普通の対応」との声もあった。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)