「死ぬつもりなく逃げた」 京アニ・青葉容疑者 放火で巻き込まれ想定せず?

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 「京都アニメーション」第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件で、殺人などの疑いで逮捕された青葉真司容疑者(42)が「死ぬつもりはなかったので(現場から)逃げた」という趣旨の供述をしていることが、京都府警への取材で明らかになった。全身にやけどを負った青葉容疑者は、現場近くで倒れているところを確保された。まいたガソリンが気化して室内に充満し、放火した際に自らも巻き込まれる恐れがあることを知らなかった可能性がある。

 府警によると、青葉容疑者は事件直前、ホームセンターで購入した携行缶2個にガソリン40リットルを入れ、包丁6本とハンマーなどと一緒に台車に載せてスタジオのそばまで持ち込んだ。携行缶は現場から約30メートル離れた路地に放置されており、ここでガソリン十数リットルをバケツに移し替えて放火したとみられている。

 青葉容疑者は事件直後、現場から数十メートル離れた路上で身柄を確保された。全身の9割に重いやけどを負い、逮捕後の現在も寝たきりの状態。府警の取り調べに対し、「ガソリンに火を付けたら、自分の右腕にも火が付いたので外に出た」と供述しており、府警は放火した後に驚いて逃げたとみて当時の認識を詳しく調べている。

 第1スタジオは1階の入り口付近に最上階の3階まで続くらせん階段があり、気化したガソリンの影響で火勢を増した炎が、この煙突状になった階段を通じて一気に建物全体へ広がったとみられる。青葉容疑者は「1階に入ると、3、4人いるのが目に入った」などとした上で、「(犠牲者は)2人ぐらいと思っていた」とも供述しており、被害が建物全体に及ぶと想定していなかった可能性がある。

 また、青葉容疑者が複数の京アニ作品について、自分の作品の盗作だと主張していることも判明。京アニがアニメの原作を公募する「京都アニメーション大賞」に少なくとも長短編1点ずつを応募していたが、形式面の不備があり、いずれも1次審査で落選した。京アニの代理人弁護士によると、中身を審査する前の段階で除外され、京アニ関係者の目に触れることはなく、「(京アニ作品に)似る余地はなかった」と説明している。

 一方、京都地裁は29日、弁護側が容疑者の勾留取り消しを求めた準抗告を棄却した。【千葉紀和、添島香苗】