こんな時どうするQ&A:次亜塩素酸を噴霧すると除菌できるの? 効果は確認されていません

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 品薄のアルコール消毒液に代わって、次亜塩素酸水を使う人が増えています。物品や手指の消毒のほか、最近では次亜塩素酸水の噴霧器を置いて加湿器のようにミストで“空中除菌”をしようとする企業や自治体もあります。消毒の効果はあるのでしょうか。

 次亜塩素酸水は塩酸や食塩水を電気分解して得られる水溶液ですが、新型コロナの消毒効果はよく分かっていません。このため、独立行政法人の製品評価技術基盤機構が物に付いた新型コロナを消毒できるかどうかを調べています。同機構消毒手法タスクフォースは「塩素濃度やpHで効果が違う可能性がある」としていますが、あくまで食器やドアノブなど身近な「物」への消毒効果を調べているだけです。手指の消毒や噴霧の効果、人体への有害性は調べていません。

 一方、実際には次亜塩素酸水の噴霧器を導入する飲食店やタクシー、幼稚園などが増えています。学校や保育園、公共施設、コミュニティーバスの設置例もあります。感染リスクを減らす目的ですが、厚生労働省の結核感染症課は「もし物に対する効果があるとしても、噴霧に効果はない」と効果を否定しています。また「空中を漂う有効成分がウイルスと出合う確率は極めて低い」としたうえで、「感染予防に役立つ見込みがなく、濃度など条件次第では有害になりうるので使用はやめてほしい」と求めています。病院での使用例も確認していないそうです。

 次亜塩素酸水は食品の殺菌に使われ、食品添加物にも指定されています。「それなら吸い込んでも安全では?」と思う人がいるかもしれませんが、独立行政法人・国民生活センターはこれを否定します。食品安全委員会の行政文書の中でも「次亜塩素酸水は最終食品の完成前に除去すること」とし、「噴霧が(人体に)安全とはどこにもうたわれていません」(商品テスト部)と話しています。同センターは消毒・除菌をうたう商品情報を5月に公表し、名前の似ている「次亜塩素酸ナトリウム」も「噴霧して吸ったり目に入ったりする健康に害を及ぼす可能性がある」と注意喚起をしています(http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20200515_2.html)。

WHO「消毒剤の人体への噴霧は推奨しない」

 経済産業省は29日、次亜塩素酸水の噴霧についてまとめた資料を公表した。「新型コロナへの有効性は確認されていない」ほか、WHO(世界保健機関)の「消毒剤の人体への噴霧はいかなる状況でも推奨されない」という見解のほか、目の腫れや呼吸困難など健康被害とみられる国内の報告2例も紹介した(https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529005/20200529005.html)。【尾崎修二】