よくわかる人工知能の基礎知識:AIがデジタルトランスフォーメーションの起爆剤に? “ミニDX”から始める企業変革 (1/4)
ここ数年で「デジタルトランスフォーメーション」(DX)という言葉をよく聞くようになった。具体的にDXとは何を指しているのか。同様に注目されている技術の一つであるAIとの関係も見ていきたい。
by 小林啓倫,ITmediaビジネスの世界ではさまざまなバズワードが生まれるが、ここ数年でよく聞くようになった言葉が「デジタルトランスフォーメーション」(Digital Transformation)だろう。DXと略されることも多いこの言葉は、文字通り「デジタル技術による変革」を意味し、新しく登場したIT技術を使って社会やビジネスを変えていくことを意味する。調査会社の米International Data Corporation(IDC)は、DXに対する全世界での支出が2023年までに5.3兆ドルに達すると予測している(2019年10月時点)。今回は、それほど大きく注目されるDXとAIの関係を考えてみよう。
連載:よくわかる人工知能の基礎知識
いまや毎日のようにAI(人工知能)の話題が飛び交っている。しかし、どれほどの人がAIについて正しく理解し、他人に説明できるほどの知識を持っているだろうか。本連載では「AIとは何か」といった根本的な問いから最新のAI活用事例まで、主にビジネスパーソン向けに“いまさら聞けないAIに関する話”を解説していく。
(編集:村上万純)
DXに対する誤解
あらゆるバズワードにいえることだが、DXもまた、多用されることから意味があいまいになってしまっている。特に経営層の間では、デジタルという言葉の響きのせいか、単にIT化を推進するのとイコールになってしまっていることも多い。しかし多くの定義において、DXがIT活用にとどまらず、より大きな変革を指す言葉であることが示されている。
例えばこのキーワードを提唱したとされるスウェーデン、ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授は、DXについて「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と説明しており、より広い変革を意味する言葉であると示唆している。
またIDCは、DXを次のように定義している。
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立することを指す。
彼らのいう「第3のプラットフォーム」とは、モバイル、ビッグデータ、クラウド、ソーシャルの4つの要素で構成される新しいプラットフォームを指す。いずれにしても、こうしたデジタル技術はあくまでツールの位置付けであり、それを支えとして破壊的な変化に対応したり、自ら業界を破壊するようなビジネスモデルを生み出したりすることに主眼が置かれている。
経済産業省も、18年に開催された「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」の第1回において、「デジタルトランスフォーメーション推進に当たっての課題は、各企業の経営戦略や新規サービス創出、組織/人材、ITシステムなど多岐にわたる」と指摘している。さらにさまざまなDXの定義を考察した上で、「DXにおける『デジタル』の定義として、『複数の技術革新が、つながり(コネクティビティ)の向上という意味で統合されていくこと』がよく引用されている」と説明する。
こうした定義をまとめると、DXとは「複数の先端デジタル技術を組み合わせて活用し、複数の業務領域を変えながら、革新的なビジネスモデルを生み出すこと」といえるだろう。