焦点:生産・雇用に深い爪痕、コロナ直撃の4月 本格回復は1年以上先か

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竹本能文 浜田寛子 中川泉

[東京 29日 ロイター] - 新型コロナウィルスの感染拡大に伴う世界的な需要減と国内消費の低迷が、4月の生産・雇用に深い爪痕を残したことが、29日発表の経済統計で明確になった。生産は現基準で最低水準まで落ち込み、4─6月期は生産活動が1割以上下押しされる通し。休業者も過去最高の597万人となった。緊急事態宣言解除後も経済の回復ペースは鈍いとみられ、生産、所得環境のコロナ前への回復や消費活性化には1年以上かかるとの見方が広がる。

<生産回復に1-2年>

4月の鉱工業生産は予測に比べ大幅に悪化した。前月比9.1%減の落ち込みは、経済産業省による事前見通し(補正値)の1.3%減を大幅に下回り、2015年を100とする今基準内では最大の低下幅。生産水準も急速に低下し、今基準内では群を抜いて低い、最低の水準となった。

上野剛志. ニッセイ基礎研究所 シニアエコノミストは「リーマンショック時は輸出直撃型だったが、今回は輸出と内需系の両方を直撃する多方面ショックのため、影響が大きい」とみている。

コロナが直撃したのが自動車だ。経済社会活動が封鎖された欧米向け中心に、自動車関連の実質輸出は前月から40%と大幅減少。国内外のサプライチェーンが崩れて部品供給の遅れが生じたほか、消費自粛により需要が低迷、生産調整も行われた。生産活動の低下に伴い、石油・石炭製品工業も大幅な減産となるなど、外出自粛はガソリンの生産減少にもつながっている。

5、6月の企業の生産計画である予測指数を踏まえると、4-6月期生産は前期比12-15%程度の2桁の落ち込みになると予想する調査機関が多い。過去10年間では見られなかった落ち込み幅となる。

緊急事態宣言は全国規模で解除されたものの、企業自身の事業見通しは極めて慎重だ。5月前半に実施したロイター企業調査では事業活動へのコロナウイルスの影響が終息するのに数カ月かかるとの見方が36%、終息のめどは立たないとの回答が51%を占めている。

第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストも「世界的に感染拡大が終息しても、雇用・消費が戻らないと需要は戻らない。鉱工業生産の水準がコロナ前にもどるのに1年か、2年かかるのか、不透明だ」とみている。

<雇用にも波及、4月失業率は実質11%台>

生産活動の大幅な低下に加えて、雇用の悪化も鮮明化してきた。

4月の労働力調査では、就業者数が前年同月比80万人減少と前月の26万人減少から一気に拡大。失業はしていないが休業中となっている休業者は597万人に上っている。従来は100万人台だったが、3月に249万人に増えたあと、4月はその倍以上となった。

調査は4月末に実施されており、その後の緊急事態宣言の解除による事業活動再開による再雇用の動きも予想されるが、300万人にのぼる非正規の休業者の職場復帰がかなわなければ、失業者はさらに増えかねない。休業者を含めた失業率を試算すると4月の失業率は表面上の2.6%から11.4%に急上昇する(第一生命経済研究所の星野卓也・副主任エコノミストの試算)。

こうした休業者は、雇用関係が維持されているものの、無収入あるいは減額された給与で生活していると想像される。そのため家計所得は全体として大きく悪化していると考えるのが自然だ。さらには、企業の中にも事業規模の縮小や廃業を余儀なくされるところもあり、失業者の増加が今後消費へと波及することが予想される。

政府による持続化給付金や雇用調整金などにより、一定程度影響は緩和されそうだが、それでも経済のあらゆる面での打撃を全てカバーできるものでもない。

実際、5月ロイター企業調査では企業の間では今年前半の業績見通しは赤字が42%を占めているほか、黒字維持でも大幅減益との回答が41%に上っている。

大和総研の小林俊介シニアエコノミストは、7-9月までは給付金などで雇用者所得は前年比増加の可能性もあるが、それが切れるであろう年後半には所得の低迷が消費の悪化をもたらす悪循環に陥るリスクを指摘する。企業業績の悪化による賞与カット、場合によってはリストラの可能性もあるほか、感染リスクが消えないうちは先行きの不透明感も残るためだ。「消費が今年1月程度に戻るのが21年、昨年秋の増税前に戻るのが22年となる可能性もある」とみている。

*写真を追加して再送します。

(編集:石田仁志)