過剰還付の1500万円 1年半で使い切る額ではない
by 猪野 亨 大阪府摂津市が誤って1500万円を過剰に還付してしまった、1年半後に過剰還付を受けた男性に返還を求めたところ、既に使ってしまった…
誰もがこれはないだろうと思うところです。
送金ミスはもちろん問題ですが、とはいえ誤りであることは振り込まれた者であれば当然に認識し得たはず。
自分が働いて、あるいは投資などでも良いですが、それは少なくとも自分で努力して稼いだものです。還付であろうと戻ってきたお金はあぶく銭ではなく、自分で稼いだカネが原資なわけですから、それをわずか1年半で使い切れってしまうことができるわけがありません。使い切れるわけがないというのは多額だからという意味ではなく、そんな無駄遣いするわけがないだろという意味です。
本当に使ったのかどうかも問われると思います。
「市のミスで「1500万円」も過大還付、すでに使った場合は「返さなくていい」ってホント?」(弁護士ドットコム)
不当利得返還請求(民法703条)に基づく場合には現存利益を返還する義務を負います。悪意であれば全額に利息を付して返還する義務があります。
この場合、浪費であれば現存利益なしと考えられています。形を変えて何かが残っているわけではないからです。借金の返済であれば、借金はなくなるという形で現存利益はあります。
2020年5月27日撮影
この男性の代理人弁護士は、使ってしまった以上、返還を要求するのは酷だと述べていますが、誰も酷などと考えていません。
この誤りが10万円、20万円程度で、そして還付金に喜んで、真実、遊興費で浪費してしまったというのであれば酷と考えられる場合があります。
現存利益がないということの意味でもあるのですが、あぶく銭だから使ってしまえ、という発想は決して特殊なことではないからです。後から返せと言われるものであることを知っていたのであれば決して使いません(知っていれば悪意であり当然に返還義務を負う)。生活費に食い込むことはないと判断したからこそ浪費したのです。それを後から返せと言われたら生活費分を削って返還しなければならない…
それはいくら何でも酷だといううことで現存利益に返還義務を限定しているわけです。それは仕方ないよね、という価値判断があるからです。
とはいえ、1年半で1500万円ですか。1か月に100万円以上です。いくら何でも誤解する額ではないだろうというのが誰もが思う疑問です。この男性はこうした疑問にも答えるものでなければなりません。こうした疑問に答えるものでなければ誰も「酷」などと考えるものではありません。
いずれにしても、大阪府摂津市の男性の対応が理解されることはないでしょう。