出場制限「ワンチームと相反」 外国出身選手、ラグビーTL規約改正求め嘆願書

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 日本代表強化を名目にラグビー・トップリーグ(TL)での出場機会が不当に制限されているとして、日本国籍を持つ外国出身選手が、TL規約改正を求める嘆願書を日本ラグビー協会に提出した。2019年ワールドカップ(W杯)の日本代表のスローガンで多様性の尊重を表す「ONE TEAM(ワンチーム)」と相反するルールに対し、日本協会の判断が注目される。

 嘆願書を提出したのは、ニュージーランド(NZ)代表やオーストラリア代表の経験があるロス・アイザック(35)=NTTコミュニケーションズ、ヘンリー・ブラッキン(31)=同、ボーク・コリン雷神(35)=リコー=の3選手。日本で長年にわたりプレーし続けている。

 TLは規約で、試合に同時出場できる外国籍の選手の人数を定めている。外国籍(外国籍で日本以外に代表歴がある)は同時に2人、特別枠(外国籍で日本以外に代表歴がない)は同時に3人までとしている。23人の試合登録メンバーには、外国籍と特別枠を合わせて6人までしか入れない。

 3選手は日本国籍を持っているためそうした制約と無関係にプレーできるはずだが、規約上は外国籍のまま。16年シーズンを前にTL規約が改定され、日本以外で代表歴のある選手が16年9月以降に日本国籍を得ても、外国籍の扱いになるとされたからだ。

 この規約改定は、19年W杯に向けた日本代表強化と、代表資格を巡るラグビー界独自のルールが影響している。ラグビーの代表資格は国籍を条件としない。「継続して36カ月以上居住」など複数ある条件のいずれかを満たし、過去に他の国・地域で代表歴がなければ、代表資格を得られる。日本協会によると16年の改定は、日本代表になる資格がある選手の出場機会を創出することなどが目的だった。

 TLの規約上、11年に来日し17年に日本国籍を取得したFWのロスは、NZ代表でテストマッチ(国・地域代表試合)に8試合出場しているため「外国籍」。一方、同じく17年に日本国籍を取得し、19年W杯で日本の躍進に貢献したバックスのラファエレ・ティモシー(28)=神戸製鋼=は、出身地サモアなどで代表歴がなく「日本国籍」だ。

 早稲田大の友添秀則教授(スポーツ倫理学)は「多様性が極めて優れたスポーツのはずなのに、あからさまな差別と考えられる。プレーする権利を侵害している。ワンチームの精神とも矛盾する」と指摘する。

 5月に嘆願書を受理した日本協会は、理事や弁護士らによる特別チームを編成。6月10日の理事会で規約の妥当性などの検討状況を報告する。日本協会の岩渕健輔専務理事は「慎重に丁寧に、早急に対応すべき問題」と話している。【谷口拓未】