縫製技術生かし医療用ガウン80万着 兵庫のかばん組合、経産省に直談判し受注

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 新型コロナウイルスで経済的打撃を受けた兵庫県鞄(かばん)工業組合(兵庫県豊岡市、組合員64人)は28日、縫製技術を使った医療用ガウン80万着を経済産業省から受注したと発表した。材料の不織布は商社「帝人フロンティア」(大阪市北区)から提供され、工賃は1着約300円にとどまるが、かばん職人の雇用維持と、医療崩壊の防止を優先した。加盟企業など21社が手分けし、8月末までに完納する。【村瀬達男】

 かばんメーカー「由利」(豊岡市上陰)社長の由利昇三郎・同組合理事長▽「マスミ鞄囊」(同市立野町)社長の植村賢仁副理事長▽「足立」(同市若松町)社長の足立哲宏副理事長――が市役所で記者会見した。

 きっかけは、加盟企業の今春の売り上げが8~9割減となり、これを危惧した同市が4月下旬、組合に「縫製技術で医療用ガウンができないか」と提案したこと。組合は市消防局から見本を取り寄せ、生産可能と判断。2020年2月に経産省の輸出支援事業でイタリアに出展したツテを頼り、同省に直談判した。同省から紹介された帝人フロンティアが、防水加工した不織布を提供し、組合が裁断、縫製、検品、梱包(こんぽう)する役割分担で5月8日、受注した。

 ガウンは防護服の上から着る使い捨てタイプで、サイズはXLのみ。袖口はゴム入りで、首と腰の後ろの2カ所で、ひもで結ぶ。材料費を除く総事業費は、工賃や裁断機などで計2億6400万円。市からは裁断機購入に1500万円の補助を受けた。21社が規模に応じて1万~22万着を生産し、検品などを含めると、約2000人が携わる。

 組合は同市加広町の旧薬局の建物を借り、不織布100枚を一度にガウンの形に切り抜く裁断機を19日に設置し、検品と梱包を含めた拠点にした。縫製技術は各社がサンプルを持ち寄り均一化した。

 由利理事長は「豊岡鞄は一般的に丁寧に作るが、今回は限られた予算で早期納品を目指す。かばんの糸の3分の1から4分の1の細い糸で縫うのは難しく、各社とも利益はほとんどないが、ミシンを動かすことを優先した」と話した。