二つのフットボールと「にわかファン」

編集委員 片山一弘

27年前に爆発したJリーグ人気

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Jリーグ開幕戦は熱狂した=1993年(平成5年)5月16日朝刊

 久しぶりにJリーグの開幕戦を見た。

 今期の開幕戦ではない。1993年(平成5年)5月15日に行われたJリーグ最初の試合、ヴェルディ川崎対横浜マリノスだ(今ではそれぞれ東京ヴェルディ、横浜F・マリノスと名を変えている)。

 2月下旬に開幕したものの、第2節以降を休止しているJリーグが、ファンサービスとして今年の同日同時刻にネット配信したもので、木村和司さん、柱谷哲二さんら試合に出ていた往年の名選手たちの解説つきという趣向だった。

 日本代表の新旧スターが並ぶ両チームは、当時の黄金カード。旧国立競技場を埋め尽くした大観衆の熱気に押され、激しくぶつかり合う。当時、記者席で見ていた筆者には懐かしい光景で、OBたちも口々に当時の感慨を語り合っていた。

 27年前のこの日から、Jリーグ人気は爆発した。あらゆる試合が満員、すべてがプラチナチケットという状況がしばらく続いた。その前年に、前哨戦のような形で開かれたナビスコカップで、色とりどりのフェイスペイントを施したサポーターたちが熱心に応援する姿を見て、「この人たちは今までどこにいたのだろう」と思ったのを覚えている。

 80年代の日本サッカーは冬の時代で、日本リーグのスタンドはガラガラだった。だから、開幕の年に各地のスタンドを埋めた観客のかなりの割合は、Jリーグで初めてサッカーに興味を持った、いわゆる「にわかファン」だったはずだ。

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