「出生率1・8」目標、少子化社会対策大綱を閣議決定…不妊治療助成や児童手当の拡充検討

 政府は29日午前の閣議で、今後5年間の少子化対策の指針となる「少子化社会対策大綱」を決定した。若い世代が家庭を持ち、子供を育てることに前向きに臨めるよう、経済的な環境整備に重点を置いた。

 大綱には、希望通り子供を持てた場合の出生率(希望出生率)を今後5年間で1・8に引き上げる目標を初めて明記した。少子化の背景には、経済的な不安定さと、子育てや教育の費用負担の重さがあると指摘。こうした不安を解消するため、新婚世帯の新生活支援の拡充や若者の正規就労の推進などに取り組むことを盛り込んだ。

 政府が行った意見公募では、高額な医療費がかかる不妊治療の負担軽減を求める声が多かった。2020年度中に治療の調査を行った上で、治療費助成を受ける際の所得制限の緩和や、医療保険の適用範囲の拡大を検討する方針を示した。

 子育て世代への対応として、男性の育児休業取得率を現在の6%から30%に引き上げる数値目標を掲げ、配偶者の出産直後に休業を取得しやすくなる仕組みなどを検討する。中学卒業までの子供に支給する児童手当は、多子世帯への増額も視野に、「子供の数や所得水準に応じた効果的な給付のあり方を検討する」とした。

 新型コロナウイルスの感染拡大についても言及し、安心して出産、子育てができる環境を整備するため、妊産婦の感染対策や子供の見守り体制を強化する方針を掲げた。安倍首相は閣議で「施策を速やかに具体化し、実施に移してほしい」と述べた。

 大綱は04年に策定され、5年ごとに見直している。前回大綱は15年から5年間を子育て環境整備の集中期間と位置付け、出生率の向上を掲げた。しかし、1人の女性が生涯に産む子供の推計人数を示す合計特殊出生率は、18年でも1・42と低迷。19年の出生数は過去最少の86万4000人となり、初めて90万人を割った。