苦境だからこそ笑顔届けたい 京都の和菓子店 アマビエ菓子や手作りセット

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 京の代名詞の一つでもある和菓子店が、新型コロナウイルスの感染拡大による観光客の激減などで苦境を迎えている。少しでも売り上げにつながればと、疫病を鎮めるとされる妖怪「アマビエ」を模した菓子を作ったり、湯葉など他の名産との詰め合わせを販売したりするなど、試行錯誤を続けている。関係者は「和菓子を通じて少しでも笑顔を届けたい」と話す。

 1917(大正6)年創業の「二條若狭屋」(京都市中京区)は5月から、アマビエを模した和生菓子の販売を始めた。ういろうの生地で半人半魚の妖怪を可愛らしくかたどり、中には白あんが入る。新型コロナの影響で百貨店やお茶会向けの販売が落ち込む中、4月から始めたオンライン販売でも好評といい、藤田茂明社長は「発送時には感謝の手紙も同封し『少しでも明るくなるように』と願っている」と期待する。

 1803(享和3)年創業の「亀屋良長」(同市下京区)は和菓子とともに、茶や湯葉、黒七味などを詰め合わせた「おうちで京都気分」を発売。自宅であんこを炊けるよう、小豆や砂糖など全ての材料を分量通りにそろえた「手作りあんこセット」も作った。吉村良和社長は「外出自粛の中でも京都を楽しみたい人や、自宅でお菓子作りをする人に届けたい」と話す。

 両社は18日、市役所を訪ね、門川大作市長に和菓子を寄付した。門川市長は「いろいろな時代を乗り越えてきた、京都の老舗ならではの取り組みだ。お菓子の力で市民の笑顔につながれば」と話した。寄贈された和菓子は、新型コロナ対策の最前線で働く保健所職員らに配る。【小田中大】