広島・長崎の平和式典、規模縮小 参列者、例年の1割に

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核といのちを考える

2020年5月29日 23時39分

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2017年の平和記念式典の会場=広島市中区、上田幸一撮影

 広島市は29日、原爆投下から75年にあたる今年8月6日の平和記念式典について、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、規模を縮小すると発表した。座席数を例年の1割以下の最大880席とし、被爆者や遺族の参列を優先する。また密集を避けるため、平和記念公園内の会場周辺への立ち入りも規制する。

 例年は会場内に1万1500席を設置し、会場周辺を含めて約5万人が参加するが、今年は各座席に2メートルの間隔を空け、誰でも座れる一般席は設けない。式典には、国連のグテーレス事務総長が現職の国連事務総長として10年ぶりに参列する意向を示していたが、新型コロナで来日できなくなった場合はビデオメッセージを会場で流す方針。松井一実市長は会見で「残念だが、慰霊の思いをしっかり発信できるようにしたい」と述べた。

 広島県原爆被害者団体協議会(坪井直理事長)理事長代行の箕牧(みまき)智之さん(78)は「規模が小さくなるのは仕方ないが、核兵器廃絶を心から願う被爆者の思いを大きく大きく世界に訴えてほしい」と話した。

 また、広島市は長崎市とともに7月上旬~9月に米ハワイで原爆展を開く予定だったが、松井一実市長は29日の会見で「7月開催は見送らないといけない。感染症が落ち着けば、年内開催を目指したい」と延期する方針を述べた。(東郷隆)

 長崎市への原爆投下から75年となる8月9日の平和祈念式典について、田上富久市長は29日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、参列者を例年の1割にあたる500人ほどに抑えて開催すると発表した。

 平和祈念式典は毎年8月9日、同市の平和公園で開催しており、昨年は被爆者や遺族、各国の駐日大使ら5千人超が参列した。

 今年は「3密」を避けるため座席の間隔を2メートルほど空け、昨年4千席用意した座席数を500席に抑える。誰でも座れる一般席は設けず、参列者も被爆者5団体の代表者らに絞る。招待する政府関係者や駐日大使については今後も協議を続ける。参列者以外で追悼を希望する人は、式典終了後に会場に入れるようにする。2カ所の屋内会場で中継を見ることもできる。

 式典は例年、被爆者らでつくる「被爆者歌う会ひまわり」の合唱で幕を開けたが、今年は、感染の危険性の高い高齢の団員への配慮などから取りやめる。団員の田川代枝子さん(86)は「『節目の今年は絶対歌いたい』と思っていたので本当に残念。私より高齢で、杖をつきながら練習に来る人もいる。来年はどれだけの人が歌えるんだろう」とため息をついた。

 被爆者5団体の一つ、長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(79)は「被爆80年の節目には、どれだけの被爆者が残っているだろう。私も『今年が最後かも』という覚悟を持っている。今年も核兵器廃絶を願い、政府に被爆国としての責任を果たしてほしいという気持ちで臨む」と話した。(弓長理佳)

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