東日本大震災の被災体験を伝え「未来の命救う」 大槌高生が絵本制作、小中一貫校に贈る

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 岩手県立大槌高の復興研究会で活動する3年生の女子生徒3人が、東日本大震災の被災体験を基にしたDVD付き絵本「伝えたいこと あの日、私は小学2年生だった」を制作した。「震災を伝えることは、未来の命を救うこと」という思いを込めた。3人は27日、小中一貫校の大槌学園を訪れ、松橋文明学園長(58)に完成した絵本を手渡した。

 制作したのは、佐々木結菜さん(17)、土沢葵さん(17)、藤社彩乃さん(18)。3人は2019年1月、神戸市で防災学習の成果を発表する「ぼうさい甲子園」(毎日新聞社など主催)に参加。全国の学生と交流して刺激を受け、半年かけて防災紙芝居を制作した。てんでんこでの避難や、災害に強いまちづくりの大切さなど、3人が震災で感じたことをテーマに、物語やクイズを描いた。

 紙芝居は同年夏から約20回、全国での交流会や発表会で披露して好評だったが、新型コロナウイルスの影響で今年3月以降は会が休止になった。佐々木さんは「遠方に出かけて実演できなくても、絵本なら子どもたちに繰り返し読んでもらうことができる」と紙芝居を基にした絵本制作のきっかけを語る。土沢さんは表紙に3人の顔を描いた。「次の津波が来た時、絵本を読んでくれたみんなの命が守られれば、私たちがまいた種が花開いたことになるのかもしれない」と表紙に込めた思いを語った。

 A4判72ページで、挿絵やDVD編集は美術部員や卒業生がサポートした。100冊を制作し、県内の教育機関や伝承施設、ぼうさい甲子園参加校に贈る。コロナ終息後は「町内の子どもたちに、防災クイズを実演したい」(藤社さん)と考えている。

 大槌学園の松橋学園長は、3人の絵本制作について「家庭と地域、学校が一体になった町の復興教育の成果」とたたえた。震災を経験していない子どもたちや教員に伝える教材にするという。【中尾卓英】