子どもにマスクは必要なのか?日本小児科医会「2歳未満は不要」の声明が話題に

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 子どもにマスクは必要なのか――。緊急事態宣言が解除され、学校や幼稚園、保育園に通う子どもが増えてきます。そんな中、日本小児科医会が発表した「2歳未満の子どもにマスクは必要ない」という声明が話題になっています。「じゃあ2歳以上の子どもは?」と思った保護者もいるかもしれませんが、国も幼稚園児や保育園児に着用は求めていません。声明を出した同医会の神川晃会長に話を聞きました。

日本小児科医会声明の概要

 医会が25日に発表した声明の概要は以下の通りです。

 ――乳児は呼吸器の空気の通り道が狭く、マスクは呼吸をしにくくし、心臓の負担になる

 ――マスク自体や嘔吐(おうと)物による窒息リスクが高まる▽体内に熱がこもり熱中症のリスクが増す▽顔や唇の色、表情の変化など体調異変に気づくのが遅れる、などの悪影響がある

 ――世界的に子どもの感染例は少なく、重症例もきわめて少ない。学校や幼稚園、保育園でのクラスター(集団感染)の発生はほとんどない

 ――アメリカの疾病対策センター(CDC)も「2歳以上の子どもが人と接するような外出をする場合は勧めるが、2歳未満の子どもは窒息のおそれがあるため使わないで」と呼びかけている

「未就学児がマスクを着ける必要は感じない」

 東京都大田区で小児科クリニックの院長を務める神川会長は「1歳前後の子がマスクを着けて来院することが増えた」と話します。街ではほとんどの大人がマスクを着けています。「乳児にも同じように着用を強いる風潮は避けるべきだ」という危機感が声明を出した理由だと言います。

 では「2歳以上」の子どもはどうでしょう。神川会長は個人の見解として「未就学児がマスクを着ける必要は感じない」と言います。声明で説明した通り、子どもから子どもへと感染を広げる事例は報告されていない上、未就学児はすぐマスクを外そうとしたり、口元を触ったりするので、「かえって感染を広げる可能性がある」と指摘します。厚生労働省も文部科学省も、幼稚園や保育園への通知の中で、園児へのマスク着用を求めていません。

 一方、小学生以上について文科省は「基本的には常時着用」のほか、「体育の授業では不要」「熱中症などの健康被害が発生する可能性が高いと判断した場合は外して」と呼びかけています。神川会長も小学生は手洗いの励行などができる上、大人の年齢に近づいていくため、文科省方針を否定はしていません。

 ただ「現時点では子どもの重症例がきわめて少なく、子ども同士の集団感染もほとんど確認されていない。それは子どもにも保護者にもしっかり周知されるべきだ」と強調します。そして「マスク着用を含めた感染症対策ばかりが優先されると、健全な発育がおろそかになりかねない。もっと議論が必要ではないか」と話しています。【聞き手・尾崎修二】