適用保険で支援に差 縦割りで「ひずみ」 札幌の精神医療訪問看護事務所マスク不配

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 精神疾患の患者を専門に支援する札幌市内の訪問看護事業所に、厚生労働省から介護施設や医療機関などに配布されたマスクが届かなかった問題で、訪問看護事業の関係者からは、適用される保険によって介護施設が区別される縦割り行政の弊害を指摘する声が上がった。【高橋由衣】

 厚労省は3月から、新型コロナウイルスの感染リスクが高い、高齢者や職員を対象とした介護施設などと、医師や看護師を対象とした医療機関へのマスクを配布。道内の介護施設には同月中に約420万枚が配られた。

 同省によると、訪問看護事業所は介護施設と医療施設の両方に該当するものの、配布に際しては、介護保険が適用される利用者と施設職員を対象とした。このため、医療保険の適用となる精神疾患の患者を専門に支援する札幌市豊平区の「訪問看護ステーションなずな」は対象から外れた。道を経由した医療機関への配布でも、指定医療機関や感染者を受け入れる病院などが優先され、なずなには行き渡らなかったとみられるという。

 地域に訪問看護事業を根付かせる活動などに携わる日本訪問看護財団(東京都)によると、訪問看護事業では一つの事業所で、介護保険が適用される高齢者や医療保険が適用される精神疾患や難病患者など、双方の医療支援をしている場合が約9割。精神医療など医療保険の適応者のみが対象となる事業所は増加傾向だが、ごく一部という。

 佐藤美穂子・常務理事は、なずなのような事例について「介護が優先され、精神医療の事業所が置き去りになってしまった。保険にかかわらず、医療従事者であることには違いない。支援に差が出るのはおかしい」と話した。患者の適用保険が介護・医療の両方に該当する場合、保険制度が二重になり、請求業務などが煩雑で事業所の負担になっている実情もあり、訪問看護事業における保険制度を「看護保険」のような形で一元化する必要性を訴えた。