「生き残りかけあらゆる手立て講じる」漁業資源確保、養殖に自信 マルハニチロ社長

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 今年4月1日に水産大手マルハニチロの社長に就任した池見賢氏(62)が毎日新聞のインタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で売り上げが落ち込むなか、「あらゆる手立てで生き残りをはかる」と話した。同社としては6年ぶりのトップ交代。逆風の中での船出となったが、新型コロナを機に業務改革を進める考えも明らかにした。【聞き手・袴田貴行、撮影・加藤隆寛】

 ――足元の事業環境は?

 ◆新型コロナウイルスの影響で大変厳しい。インバウンド(訪日客)の激減で高級魚の売り上げが減っているほか、外出規制で外食の需要が減り、ホテルや飲食店向けの業務用冷凍食品の売り上げも落ち込んでいる。

 ――当面の経営目標は?

 ◆2018~21年度の3年間の中期経営計画では、売上高1兆円、営業利益310億円という目標を掲げている。だが、ちょうど折り返しを迎えたところでコロナに見舞われた形だ。目標達成と会社の生き残りをかけてあらゆる手立てを講じていく。

 ――水産事業の現状は?

 ◆我々は北米、アラスカ海域で資源量の約3割、メロという高級魚が取れる豪州の排他的経済水域(EEZ)でも約7割の漁業権を有するなど、世界各地で漁業資源の確保に動いている。天然資源が頭打ちになる中、養殖事業も成長分野として取り組んでいる。魚食ブームなどで世界の水産需要はここ30年ほどで倍に増えており、十分戦っていけると思っている。

 ――冷凍食品や介護食事業にも力を入れていますね。

 ◆単身や共働き世帯が増えて、食のニーズも変化している。冷凍食品というと昔は「主婦の手抜き」といった感じがあったが、今は重要な食のパーツの一つだ。味も飛躍的に改善されており、チャーハンなどは家庭で作るよりも冷凍食品の方がおいしいという声もある。市場は広がっており、消費者のニーズに合った商品を作っていきたい。少子高齢化が進む中、介護食もこれから伸びていく分野だ。調理が簡単で介護者の負担を減らせ、食べる人たちにとっても魅力的な商品がもっと必要だと考えている。

 ――目指すリーダー像は?

 ◆社長に就任して声を大にして言っているのが「イノベーション」だ。今やっていることを深く掘って極めることも大切だが、新たなことにどんどん挑戦していかないと企業は衰退する。リーダーである私自身が先頭に立って、新たなチャレンジを率先してやっていきたい。特に今は、新型コロナの影響でいろいろ工夫しながら仕事している。平時に戻った時に、結果的に業務改革になっている状況にしたい。