台湾蔡総統、香港からの移住支援を表明 中国警戒も
【台北=伊原健作】台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は27日、香港人の台湾への移住を支援すると表明した。北京で開催中の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では28日、反体制活動を禁じる「香港国家安全法」の制定方針が採択される見通し。自由の制限を懸念し、台湾への移住希望者が急増するとの見方が出ている。中国は香港と台湾の連帯に警戒を強めそうだ。
蔡氏は27日午後に台北市内で記者団の取材に答えた。「自由と民主を追求する香港人の決意を支持する」「台湾での居住や労働などで必要な支援を行う」と表明した。蔡氏は行政院(内閣)に具体的な施策の策定を指示したと明かした。
香港人が台湾で一般の居留許可を得るには「台湾で600万台湾ドル(約2200万円)以上の投資を行う」などの条件をクリアする必要がある。こうした条件を再考し、受け入れをしやすくする可能性がある。
香港では2019年6月から政府への抗議活動が激化し、台湾など海外への移住希望者が増えた。台湾では19年に、香港人への居留許可の件数が前年比41%増の5858件となった。20年1~4月は2383件と前年同期の2.5倍となった。
「香港国家安全法」の制定方針が示されたことで、台湾では中国への警戒感が一段と強まっている。蔡総統が主席を務める対中強硬路線の与党・民主進歩党(民進党)は香港民主派と交流があり、中国側は両者の連帯に神経をとがらせている。