「政治とは一定の距離を保つべきだ」 東京高検・林検事長 黒川氏不祥事を陳謝

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 東京高検検事長に26日付で就任した林真琴氏(62)が27日、就任の記者会見に臨み、「謙虚な姿勢で検察の使命を全うするよう努力し、国民の信頼を得られるよう努める」と述べた。緊急事態宣言中に賭けマージャンをして辞職した黒川弘務・前検事長(63)の後任としての着任で、「誠に不適切で、改めておわびする」と陳謝した。

 林氏は記者会見で、黒川氏の不祥事について「検察に対する国民の信頼を揺るがす深刻な事態と受け止めている」と述べた。国民から検察に厳しい視線が向けられているとの質問に対しては「検察は国民の信頼を基盤に仕事をしている。損なわれた信頼を取り戻すことが責務だ」と応じた。

 林氏は2010年に発覚した大阪地検特捜部による証拠改ざん事件後、検察改革を推進し、「いかなる誘引や圧力にも左右されないよう、どのような時にも、厳正公平、不偏不党を旨とすべきである」とする「検察の理念」をとりまとめた。10年前に検察が不祥事からの立て直しを図る際の基本方針とした経緯があり、「今一度、理念に立ち返り、組織全体が職務に当たるべきだ」との考えを示した。

 黒川氏とは1983年の検事任官同期で、2人は法務・検察内で早くから将来の検事総長候補とされてきた。黒川氏は「政治に近い」としばしば評価されてきたが、林氏は「政治とは一定の距離を保って職務を遂行すべきだと思う。距離が近くなると国民から公正らしさが疑われる危険性がある」と考えを述べた。また「いろんな仕事を一緒にやってきた同期がこういう形で辞職したのは非常に残念」と話した。

 林氏は愛知県豊橋市出身で東大法学部卒。法務省刑事局長などを経て、名古屋高検検事長から就任した。検事としての定年を迎える7月末までに稲田伸夫検事総長(63)の後を継ぐとみられている。【国本愛】