知られざる「唯一無二の才覚」:滝沢秀明ジャニーズ事務所副社長 10年前にYouTubeに目を付けていたビジネスセンスと先見性に迫る (1/5)

新型コロナウイルスでライブや演劇は軒並み中止になる中、ジャニーズ事務所は防護服を医療従事者に寄付したり、チャリティーソングを制作したりすると発表。単に利益を求める営利企業であるわけではなく、社会貢献への意識が強い組織であることをあらためて印象づけた。社会貢献活動のプロデューサーを務めるのが同事務所の滝沢秀明副社長だ。滝沢秀明は実は10年前にYouTubeに目を付けるなど“ビジネス的な先見性”を持つ。“ジャニーズを具体例としたビジネス書”を執筆した筆者が解説する。

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 “出世をする”ことと、“革新的な事業を始める”こと。

 特にその事業が、会社全体の方向性とは反するものだった場合、この2つを両立させることは難しいように思える。伝統ある企業であればあるほど、その中で新しい流れを作ることには大きな苦労が伴う。だが、それを両立した男がいた。滝沢秀明である。

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ジャニー喜多川氏の“後継者”としてジャニーズ事務所の副社長を務めている滝沢秀明氏(右、写真提供:ロイター)

社内改革を進めながら出世を果たした男

 新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が出ていた4月――。ジャニーズ事務所が防護服を3万3000枚、医療用マスク30万枚と抗菌マスク20万枚などを医療従事者に寄付する旨を発表した。5月に入ると所属アーティスト76人(編注:後に手越祐也の参加を見合わせることになったため75人)からなる期間限定ユニット「Twenty★Twenty」を結成し、チャリティーソング「smile」を制作すると発表。チャリティーソングの曲と詞は、Mr.Childrenの櫻井和寿が手掛ける。チャリティーソングの売り上げを医療機関などに寄付する予定だ。

 この2月以降、ライブや演劇は軒並み中止になり、エンターテインメントに関わる企業は大きな打撃を受けている中、ジャニーズ事務所が、単に利益を求める営利企業であるわけではなく、社会貢献への意識が強い組織であることをあらためて印象づけた。

 「Twenty★Twenty」75人の中にはV6、Kinki Kidsや嵐、King&Prince、SixTONESなど14グループに加えて山下智久も入っている。チャリティーソングの制作自体は、同事務所が進める社会貢献活動「Smile Up! Project」の一環で、活動のプロデューサーを務めるのが同事務所の滝沢秀明副社長だ。結成にあたり「ジャニー(喜多川)の集大成として社会貢献できれば」とコメントしている。

 滝沢は2018年12月31日をもって芸能界を引退し、19年1月からはジャニーズJr.の育成やプロデュース面を担う子会社「ジャニーズアイランド」の社長に就任。ジャニー喜多川氏亡き後、9月にはジャニーズ事務所の副社長に就任することが発表された。

 現在38歳の滝沢だが、ユニットを組んでいた今井翼は「滝沢は、もう10代の頃から経営者的な才能があった」(FRaU2012年10月号)と絶賛しているし、ファンの中ではタレントとして活躍している時代から、後進の指導に尽力していたのは有名な話だ。そのビジネス的な資質や指導者としての能力の高さは、100人を率いるジャニーズJr.のリーダーだった10代のころから漏れ出ていた。

 とはいえ、一般的にはその経営者としての才覚はまだ知れ渡っていないかもしれない。本記事では、“ジャニーズを具体例としたビジネス書”として『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)を執筆した筆者が、滝沢秀明の“ビジネス的な先見性”にスポットを当てて解説していく。

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ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)

“ネット嫌い”のジャニーズの中で10年前に始めた “早すぎた事業”

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