【GO TO TOKYOパラリンピック】一ノ瀬メイ、逆境乗り越え悲願メダルへ プールが締まっているなら池で泳ぐ/競泳
新型コロナウイルス感染拡大で1年延期となった東京パラリンピック開幕まで、27日で454日。競技の魅力などを紹介する月イチ特集の第26回は、東京大会でのメダル獲得を狙い、昨年4月からオーストラリアを拠点とする競泳女子の一ノ瀬メイ(23)=近大職=に迫る。コロナ禍で使用していたプールは閉鎖。貴重な強化拠点を失ったパラスイマーの驚きの練習場所とは-。(取材構成・武田千怜)
「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることができるのは、変化できるものである」
4月2日、一ノ瀬は英自然科学者で進化論を唱えたチャールズ・ダーウィンの言葉を引用し、自身のツイッターに思いをつづった。
「プールが閉まっているなら池で泳ごう!!」
新型コロナウイルスが世界で猛威を振るう中、一ノ瀬が拠点とするオーストラリアでも3月18日に緊急事態宣言が発令された。外出は制限され、映画館や図書館など、生活に不可欠でない施設は営業停止。強化拠点で、同国北東部のサンシャイン・コーストのプールも3月末に閉鎖された。閉鎖前は1日4時間の水中練習に励んでいたが、コロナ禍でパラスイマーの日常が奪われた。
「水の中での感覚は2日間泳がないと薄れてしまう」。競泳選手に不可欠な水の感覚は水中でしか養えない。一ノ瀬は池で泳ぐことを決断した。「池や海で泳げる環境に拠点がある。最大限に活用しよう」というコーチのアドバイスを実行に移し「泳ぐとやっぱりすっきりするし、気持ちがいい」と喜びをかみしめた。オーストラリアの5月は冬の入り口。平均最高気温は23度、水温は約22度で「そろそろ寒い…」とこぼしながらも、週に2、3回、自宅から自転車で約40分の距離にある池や海に入った。透き通った水中で約3キロ泳ぎ、池の前に設置されたシャワーを使用し、汗を流した。
日本では1度しか経験のないプール以外での水泳。距離の把握や直進に苦戦し「プールでの練習をそのまま行うのではなく、池や海では何ができるか考えた」と練習内容を見直した。アップルウオッチを購入し、脈拍数やストローク数をベースにメニューを組み「水中感覚はキープできている」と好感触を得た。