香港で1000人以上抗議 立法会が国歌条例案審議再開 機動隊が360人以上拘束

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 香港立法会(議会)で27日、中国国歌への侮辱を禁じる国歌条例案の審議が再開した。28日には中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が、香港での反中活動を取り締まる国家安全法制の新設を可決する。香港中心部では1000人以上の市民が国歌条例案や国家安全法制への抗議活動を展開。機動隊が制圧に乗り出し、香港メディアによると360人以上が拘束された。

 香港では2019年6月に容疑者の中国当局への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対するデモ隊が立法会庁舎を包囲。審議は休止に追い込まれた。19年1月に香港政府が立法会に提案した国歌条例案の審議もストップしたが、20年5月初旬に親中派が委員会審議の再開を強行。27日、本会議での審議再開にこぎつけた。

 警察はこの日、3500人態勢で警戒に当たり、親中派の議員は不測の事態に備えて26日から議会庁舎内に泊まり込んだ。立法会の包囲が呼びかけられたが、周辺で混乱は起きなかった。

 ただ、中心部・中環(セントラル)や九竜半島で大勢の市民が抗議活動を展開し、機動隊と衝突した。

 立法会の審議では、民主派議員が国家安全法制の審議を要求したが、梁君彦議長は拒否し、予定通りに国歌条例案の審議を進めた。

 立法会で過半数を握る親中派は、6月4日に採決に踏み切る方針。同日は、中国政府が民主化を求める学生を武力弾圧した1989年の天安門事件から31年の節目の日。再び抗議活動が過熱する可能性がある。

 中国国歌は「義勇軍行進曲」といい「敵の砲火を押しのけて前進しよう」などと、戦いを鼓舞する内容。香港では、サッカーの国際試合などで中国国歌が演奏される際に若者らが「香港は中国ではない」と記した横断幕を掲げてブーイングを浴びせる事案が続出した。

 こうした行為を摘発するため、愛国教育を重視する中国の習近平指導部の意向を受け、香港政府が国歌条例案を提案した。条例案は、中国国歌への侮辱行為や替え歌を禁止。小中学校での国歌斉唱や国歌に関する教育、テレビでの国歌放送などを義務づける。違反すれば最長で3年の禁錮刑が科せられる。

 国歌条例案を巡っては5月10日に市民が大規模な抗議活動を展開し、約230人が拘束された。国家安全法制を巡るデモでも24日に180人以上が拘束された。

 1国2制度が採用された香港は中国本土と法体系が異なる。全人代常務委員会は17年、中国の国歌法を香港で適用すると決定した。ただこれだけでは香港で国歌法を適用することはできず、国歌法の趣旨を踏まえた国歌条例案を香港立法会で成立させる必要がある。【台北・福岡静哉】