「働き方」は果たして変わるか:コロナでの急なテレワークは結局「失敗」だったのか――第一人者に直撃 (1/3)
コロナで急速に進んだテレワーク。企業・働き手にとって「成功した」と言えるのか。第一人者に直撃。
by 服部良祐,ITmedia新型コロナ対策で急速に進んだ日本企業の在宅勤務。一方、全国で緊急事態宣言が解かれ、外出自粛が緩和されていることで、自分の職場のテレワークが今後どうなるか気になる人も多いのではないだろうか。
感染症という外部要因により「強制的」に進められたとも言えるテレワークだが、元は働き方改革の施策だった。果たして今回の取り組みは企業・働き手ともに成果を挙げたのか。そして新しい働き方として定着するのか。テレワーク研究の第一人者で、多くの企業を調査してきた東京工業大学環境・社会理工学院の比嘉邦彦教授に前後編インタビューで聞く。前編は「今回のテレワークは結局、うまくいったと言えるのか?」だ。
テレワーク否定派、実は“食わず嫌い”だった
――今回のコロナ対策による日本企業のテレワーク化について、実際の実施率や実効性をどのように評価しますか。
比嘉: 日本全体だと3割前後というところでは。調査によってまちまちで、首都圏でかなり高い比率だったり、大企業では9割近いというデータもあった。ただ、中小はやはり2割前後だっただろう。それでも(コロナ)以前に比べて倍以上に実施率は上がっており、かなり浸透したと思う。
テレワークが今回うまくいっている会社のほとんどは、コロナ騒動の以前から準備していたところだ。会社によっては全社的にテレワークがうまくいき、「オフィスが今後要るかどうか」まで検討している場合もある。
とあるテレワークの先進企業として表彰を受けていた大手のケースだが、実行するかどうかは実は現場の裁量に任されていた。上司の中にはテレワーク否定派がいて、部下も「どうせ手を挙げてもやれない」と考え、(コロナ騒動前は)全く進んでいない部署もあった。
ただ、私の知人がいるそうした部署の「反対派」上司が、持病の影響で医師からコロナ感染の危険が高まると告げられ、びっくりして自ら在宅勤務に切り替えるようになった。「意外と(自宅でも)仕事できるじゃないか」と、今や部下にも逆に奨励しているという。
このように、テレワークに反対している人のほとんどが実は“食わず嫌い”だったのでは、と考えている。そしてコロナ問題を機に、そうした人々が実際にやってみて、意外な良い面に気付くようになった。例えば楽天会長の三木谷浩史氏もテレワーク否定派だったが、今は自社でさせているようだ。