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避難所生活は「3密」が避けがたい(写真/EPA=時事)

コロナ禍で大地震発生なら「50万~60万人」の感染者発生も

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2020年に発生した主な地震

 5月上旬、何度も鳴り響いた緊急地震速報は新型コロナウイルス一色になっていた日本人に、この国が「地震大国」であることを再認識させた。頻発するアラームは巨大地震の予兆なのか。私たちはどう備えればいいのか。

 感染拡大ペースが落ち着いてきたとはいえ、首都圏を中心に新型コロナの脅威は収まっていない。この状況下で、大地震が起きたら、どんな事態になるのか。

 死者4958人──。これは1995年の阪神・淡路大震災以降に起きた災害で、震災などによる直接死ではなく、避難途中や避難後に死亡した関連死の人数だ。2016年の熊本地震では関連死が直接死を超えている。災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏は、「避難所」という場所の危険性を指摘する。

「阪神、東日本大震災ではインフルエンザ、熊本地震ではノロウイルスの集団感染が避難所で発生した。感染症はストレスなどによる免疫力の低下で罹患リスクが高くなると考えられています」

 避難所となる体育館や公民館では密閉、密集、密室の“3密”状態は避けがたい。内閣府の試算によると、南海トラフの巨大地震が発生した場合、最大430万人が避難することになるという。

 災害・危機管理情報サービスを提供するスペクティ社は、南海トラフ地震が発生した場合に、避難所で新型コロナの感染者がどれくらい出るかをシミュレーションしている。

 東日本大震災の避難所でインフルエンザが集団発生した割合や、(クルーズ船の)ダイヤモンド・プリンセス号の感染者数から推定したもので、震災発生後1週間で約16万人、4週間後には約33万人が感染すると予測している。

「新型コロナの場合、無症状の陽性者が現在公表されている感染者数の数十倍は存在すると考えられている。新型コロナの感染力が年間推計感染者数1400万人(2017~2018年)の季節性インフルエンザを上回るとすれば、避難所で抗体を持たない避難者のほとんどが感染して、50万人、60万人と感染者が出てもおかしくはない」(和田氏)

 国や自治体は、この危機に、どう対処しようとしているのか。

「政府は4月の時点で各自治体に対して、避難所に広いスペースを確保するため、新規避難所の指定、開設を求めています。しかし、避難所運営の現場からは『拡張する余裕はない』という声が出ています。災害時の保健衛生管理は地域の保健所が担いますが、現状のコロナ対応で手一杯で、広域地震ともなると応援も期待できません」(和田氏)

 これまで被災した場合は、避難所に行くのが常識だった。だが、いまや安易に避難所を訪れるとリスクに晒されることになる。

「今後は、自宅での避難が基本になります。ただし、火災や倒壊、津波や土砂崩れなど二次災害が懸念される場合は、車中避難や野外でのテント生活、あるいは、親戚や知人宅に世話になることも考える。避難所に身を寄せなければならない場合は、マスク、手洗いはもちろん、第三者と距離を置き、常にウイルスを意識した行動をとらなくてはなりません」(和田氏)

 未知のウイルスとの戦いが続くなか、容赦なく襲ってくる地震のリスクとも正面から向き合わなくてはならない。

※週刊ポスト2020年6月5日号