筑波大大学院出身の理論派ジャンパー・戸辺直人、練習再開前に本紙に語った/陸上
新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の全面解除から一夜明けた26日、陸上男子走り高跳びの戸辺直人(28)=JAL=が本紙の電話取材に応じ、金メダルを目指す来夏の東京五輪に向けた再出発を誓った。筑波大大学院出身の日本記録保持者は外出自粛期間に論文を読み、トレーニング法を学習。きょう27日から競技場での練習を再開し、レベルアップにつなげる。
高く跳び上がるための長い助走期間が終わった。受話器の向こうから聞こえる戸辺の声は、普段より弾んでいた。
「競技場で高跳びができるだけで、心からうれしい。やっとこのときが来たなという感じです」
練習拠点の筑波大は約2週間後から利用できる見通し。この日は休養に充てており、きょう27日から近隣の競技場で再始動する。バーやマットは消毒しながら使うなど、引き続き警戒を緩めず練習に打ち込む。
筑波大大学院で博士号を取得した理論派。コロナ禍で自由に練習できない状況を逆手に取り、寸暇を惜しんで論文を読みあさった。「一般の方が読書をする感覚」。トレーニング法やその効果のまとめ、跳躍力を高めるメカニズムを解説したもの…。英文も読み、徹底的に頭を動かした。
「トレーニングの強度や量の設定をどうするのが良いのか、という仮説が頭の中にある」。これから先は、描いたイメージを形にしていく時間だ。世界ランキング1位で臨んだ昨秋の世界選手権は、よもやの予選敗退。巻き返しを期していた今季を、東京五輪の延期により「テスト」と位置付けた。
「ためてきた知識を来年から本格実用できるように、これからは実験の期間に入るのかな」。夏から秋にかけての国際大会の出場は情勢を見極めて判断。10月初旬に行われる見込みの日本選手権に照準を絞り、目標に掲げる五輪の金メダルに向けた強化計画を練り直す。
9年にわたった筑波大での研究生活は社会人となった今も続いている。「外出自粛期間にやってきたことを生かせるので、わくわくします」。来夏の跳躍で、その成果を出す。(鈴木智紘)