愛媛の住職原作映画「ボクは坊さん。」 全米ストリーミング配信 30日に無料で
by 毎日新聞愛媛県今治市の四国八十八カ所霊場第57番札所「栄福寺」住職、白川密成(みっせい)さん(42)原作で、伊藤淳史さんが主演した映画「ボクは坊さん。」(英題「I AM A MONK」)が30日(日本時間31日)、インターネットで全米にストリーミング“上映”される。シカゴの映画祭「アジアン・ポップアップ・シネマ」の一環。新型コロナウイルスの影響で劇場での催しは中断されたが、映画の底力を示そうと、歴代の同祭観客賞受賞作を順次、無料公開している。
アジアン・ポップアップ・シネマはアジア各国の新作の息吹を伝えるため、2015年から春と秋に開いてきた。英語字幕付きの「ボクは坊さん。」は16年春、日中韓、香港、台湾、ベトナムなどの10作品とともに上映され、観客の投票で決まる「オーディエンス・チョイス・アワード」(観客賞)に唯一選ばれた。その後、同賞には「サバイバルファミリー」(17年製作)「カメラを止めるな!」(同)「翔(と)んで埼玉」(19年製作)など、邦画の意欲作が次々に選ばれている。
今年3月にいったん始まった同祭春のプログラムは感染拡大の影響で、3作を上映したのみで中断。米国では新型コロナウイルスによる死者が10万人に迫り、シカゴがある中西部イリノイ州も約4800人が犠牲となるなど深刻な状況が続く。このため主催者は5月10日から31日まで、これまでの観客賞作品を「家庭で楽しむオールタイム・ベスト」として週末、全米地域限定でストリーミング配信している。
オンラインながら映画祭の雰囲気を出すため、週末のプログラムを月曜にサイトで紹介して観覧希望者を募り、パスワードを伝えて決められた時間帯に見てもらう方式を取る。映画祭エグゼクティブディレクターのソフィア・ウォン・ボッチオさんは「『ボクは坊さん。』は公開作の中でファンが最も親しみ、語り続けている作品の一つ。しっかりした物語、自然な演出と素晴らしいキャストは必ず感動を呼ぶでしょう」とメールでコメントを寄せた。
白川さんは「『お坊さんコメディー』として何度も笑ってほしい」と話すとともに、観客向けに「苦しい思い、悲しい思いをあまり抑え込もうとせず、それを表現することも大事なこと。日本の田舎の小さな自然にも触れてほしい」とビデオメッセージを送った。
「いまだかつてない日々。皆さんも白川さんのメッセージから慈しみを受けるでしょう」。ボッチオさんは確信している。【松倉展人】
映画「ボクは坊さん。」
真壁幸紀監督、2015年製作。伊藤淳史さん演じる主人公が祖父の死をきっかけに24歳で住職となり、想像以上に奥深い「坊さんワールド」に戸惑いつつも人の生死に立ち会い、成長していく姿を描く。山本美月さん、溝端淳平さん、濱田岳さん、松田美由紀さん、イッセー尾形さんら個性豊かな俳優陣が主人公を取り巻く人々を演じている。原作は白川密成・栄福寺住職が実体験を人気サイトにつづったものをまとめたエッセー「ボクは坊さん。」(ミシマ社刊)。