コロナ禍越えての開幕 プロ野球の灯を守る戦いに
プロ野球の開幕が6月19日に決まった。新型コロナウイルスの流行が収束に向かい、ようやくここまでこぎ着けた。でも大変なのはここから。第2波、第3波を警戒しながらの前途多難なシーズンとなる。
■過密日程、若手にはチャンス
3週間余りという限られた時間で実戦感覚を取り戻すのが急務となる。体を動かしていたとはいっても、練習と実戦では全く違う。特に野手は投手の生きた球を打ち、ノックでは体験できない鋭い打球に目や体を慣らさなければならない。練習では100%の力を出すこともないが、試合では120%出てしまうのが野球選手の本能だ。そのギャップをどれだけ早く埋められるか。
ペナントレースは120試合に決まった。消化試合はやらないという手もあるかもしれないが、11月末までに日本シリーズを終わらせるにはタイトな日程となる。2軍も含めた総合的な投手力が例年以上に大事になりそうだ。若手のチャンスは増えるだろう。注目のルーキーもいるだけに新星の出現に期待したい。
遠征はストレスがたまるだろう。感染のリスクがつきまとう以上、ホテルに戻れば外出禁止になるはずだ。移動リスクを避けるため、同一カード6連戦も組まれると聞く。無観客の球場とホテルでの缶詰め生活を繰り返すのは息が詰まる。隠れて外出する選手もいるかもしれないが、それで感染すれば即刻クビになるだろう。遠征の多いチームは大変だ。
■経営悪化の影響は来年以降か
心身ともにタフなシーズンになるのは間違いないが、気の毒なことに、それを乗り越えても経済的な見返りは期待できない。今季の年俸は契約通りに払われると思うが、無観客などで球団の経営悪化は避けられず、それは来季以降の年俸に大きく影響する。原資がないのだから選手側も文句を言ってもしかたがない。査定ベースの一律カットといった経費削減策が考えられ、1年では済まない後遺症となるのではないか。
心配なのは、経営悪化が高給取りの流出を生み、野球の質の低下を招くこと。ただでさえ球場に行くハードルが上がったうえに、試合の質まで落ちたのでは、長期的なファン離れを招きかねない。
ファンが減り、球団経営が立ちゆかなくなればプロ野球は成り立たない。少々大げさに聞こえるかもしれないが、今季はプロ野球の灯を守るための戦いともいえる。シーズンの無事を祈りつつ、選手の奮闘を期待したい。(野球評論家)