新型コロナ感染波抑え、医療崩壊防ぐ対策を 金沢大・市村教授に聞く
by 毎日新聞新型コロナウイルスの感染拡大を受けて出されていた政府の緊急事態宣言が25日、全面解除された。石川県でも既に大半の業種で休業要請が解除され、徐々に社会活動が再開しつつある。県内で一時感染が急増した背景や今後求められることについて石川県対策本部会議のアドバイザーを務める金沢大の市村宏教授(ウイルス感染症制御学)に聞いた。【聞き手・阿部弘賢】
――新型コロナとはどんな病気なのか。
インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)は呼吸器の病気だが、新型コロナは血管を含むその他の臓器にも炎症を起こすことが分かってきた。また無症状者や症状が出る前の人からも感染が広がるのが特徴で、押さえ込むことが難しい。
――県内では2月21日に最初の感染者が出て以降、3カ月で300人近い感染者が確認された。
4月上旬から中旬にかけて感染者が急増した。3月下旬の3連休から4月上旬にかけて、既に市中感染が見られていた首都圏や関西圏から多くの観光客が訪れ、その中の症状が出ていない感染者から2次感染が広がったのだろう。県内は人口当たりのPCR検査(遺伝子検査)件数が多いことや、クラスター(感染者集団)の発生が多かったこともある。その後は接触機会を大幅に減らす対策が一定の効果を発揮した。
――県内での感染は収束したのか。
感染経路が不明のケースはほとんど出ておらず、市中感染はほぼ収束したと考えてもいいだろう。ただ、最大のクラスターとなったかほく市の二ツ屋病院で散発的に感染者が出ていることは、病院や高齢者施設にウイルスが入った時の制御の難しさを示している。
――このタイミングで経済や社会活動を再開することは妥当か。
新しい生活様式を踏まえて徐々に再開していくのは当然だ。リスクを正しく理解することが大切で、例えば、人出を感染拡大前に比べ「8割減らす」という外出自粛の目安も東京と金沢では実際の移動人数や人口密度が違う。全国一律ではなく、地域に応じた対策を考えるべきだ。
――感染状況や医療提供体制などを監視するため、県は四つの指標(感染経路不明者数、PCR検査陽性率、病床使用率、重症病床使用率)を示した。
県の基準は大阪府が先行して公表した「大阪モデル」よりも厳しい。感染の「波」が来たことを的確に知ることによって早めに対処するためにも有用だ。県民の努力の結果が分かりやすく示されるメリットもある。
――今後の対策はどう進めるべきか。
ワクチンが実用化されるまで1~2年かかる。その前に第2波、第3波は来るが、重要なのは医療崩壊を起こさないことだ。小さな感染の波に抑えながら集団免疫を獲得していくことが理想だ。感染者は発熱外来などで早く見つけるようにし、重症化させない。医療機関や高齢者施設ではスタッフらの定期的な検査も必要だろう。
市村宏教授経歴
いちむら・ひろし 1956年生まれ。山口大医学部卒業後、米国留学や京都府立医大助教授などを経て、99年から金沢大医学部(現・医薬保健研究域医学系)教授。