サウナに森林浴…幸福度世界一、体験しない? フィンランド人の日常を動画で
by 毎日新聞幸福度世界一の国・フィンランドの人々のライフスタイルをバーチャル体験してみませんか――。フィンランド人が日ごろ親しんでいるサウナや森林浴の様子を動画で配信し、見る人が自宅にいながら一緒に楽しめるオンラインプログラム(https://rentafinn.com/ja/)を、フィンランド政府観光局が始めた。動画に出演するガイドと個別に交流できる機会もあり、観光局は「新型コロナウイルスの影響で先行きが不透明な時期だからこそ、日常のささやかなことに幸せを感じるフィンランド人の生き方を多くの人に知ってもらいたい」としている。【牧野宏美/統合デジタル取材センター】
ライフスタイルに秘訣
北欧の小国フィンランドは、国連が毎年3月に発表する「世界幸福度報告」で、3年連続で幸福度ランキング1位になった。要因として手厚い社会保障や国家への信頼感、ジェンダー平等などが挙げられるが、フィンランド発祥であるサウナを楽しむ文化や、自然が豊かで森林で過ごす時間を大切にするライフスタイルを「幸せの秘訣(ひけつ)」と考える人も多いという。
観光局は、そんなフィンランド人のライフスタイルや日常生活に着目。昨年、世界各地から旅行者を招いて現地のガイドがハイキングやベリー摘みなど自然の中での過ごし方を教えたプログラムが好評だったため、「自粛生活の中、旅行を我慢している人たちを元気づけたい」と、バーチャル体験できるオンラインプログラムを企画した。
ガイドとオンライン交流
今月20日以降、アウトドアやエクササイズ、料理などに詳しいガイド役が出演する6種類の動画を順次配信している。20日配信の1回目の動画「フィンランド人と自然を感じよう」は、アウトドア愛好家のガイドがヘルシンキ郊外の森からライブで出演。ガイドは犬と一緒に緑豊かな湖畔を散歩した後、まきで湯をわかしていれたコーヒーを飲みながら、自然と幸せがどう関係しているかについて語った。500~600人が視聴し、「コロナで疲弊している今、すてきな時間をありがとう」「癒やされました」などの感想が寄せられたという。
2回目の「フィンランド流にリラックスしよう」(22日配信)では、サウナ愛好家のガイドが、湖のそばのサウナで伝統的な入り方を実演。シラカバの枝を束ねて全身をたたく「ビヒタ」の使い方や、サウナストーンに水をかけて熱い蒸気を発生させる「ロウリュ」の方法などを解説する。その後、体を冷やすため屋外に出て水温7度の湖で泳ぐ「アイススイミング」も披露している。視聴者には水の入ったバケツを準備し、一緒に顔や足をつけて冷たさを体感するよう勧めている。
29日~6月17日は、かぎ針編みやフィンランド語会話▽自然の中でのエクササイズ▽ワイルドハーブを使った料理――などを教える動画配信が予定されている。
6月22日から1週間は、動画に登場したガイドとオンライン会議システム「スカイプ」などを使い、エクササイズを一緒にしたり会話を楽しんだりできる。無料で、希望者は6月8日までにサイトから予約する(多い場合は選抜)。
持続可能な幸せ「耐える力に」
フィンランドでは、困難に耐えうる力、勇気といった意味を持つ「シス」という言葉が古くから伝わり、欧米などで現代に求められる精神性として注目されている。プログラムを担当するフィンランド大使館商務部のシニアディレクター、ヘリ・ヒメネス氏は「フィンランド人の力の源は持続可能な幸せで、人生をあるがままに受け入れ、静かな湖畔を眺めるなど日常のささやかなことに感謝します。今、私たちは(自粛生活で)つらい状況に置かれていますが、このような心構えが耐える力を与えてくれます。動画を通じてその幸福観が伝われば」と話している。