けがした父乗せ、自転車で1200キロ インド・15歳少女、8日かけ故郷に

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 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた全土封鎖が続くインドで今月、15歳の少女が負傷した出稼ぎ労働者の父を自転車に乗せ、首都ニューデリー近郊から、約1200キロ離れた故郷まで連れ帰った。地元メディアでこの件が報じられると、インドの自転車連盟が、選手養成施設の入所テストを受けるよう少女に打診した。少女は25日、毎日新聞の電話取材に「学校での勉強を優先したいが、自分の可能性を知るためにテストに挑戦する」と意気込みを語った。

 少女は東部ビハール州ダルバンガに住む学生のジョティ・クマリさん(15)。父モハン・パスワンさん(45)はニューデリー近郊のグルガオンで三輪タクシーの運転手をしていたが、1月下旬に事故で足を負傷し働けなくなった。数日後、ジョティさんは1人暮らしのモハンさんを看病するためグルガオンで同居を始め、ジョティさんの母は地元で借金をして夫であるモハンさんに送金していた。

 だが3月25日に全土封鎖が始まり、モハンさんは妻からの送金を受け取れなくなった。さらに封鎖の影響で公共交通機関も停止し、病院に行くことすらできなくなった。

 生活が困窮する中、ジョティさんは父を連れて故郷に戻ることを決意。500ルピー(約710円)で中古の自転車を手に入れ、今月8日にモハンさんを自転車の後部に乗せて出発した。日中は気温が40度を超えることもあるため、主に夜間に移動。一度だけトラックの荷台に短時間乗せてもらったが、それ以外は自転車で走り、8日後にダルバンガに着いた。

 モハンさんは25日、毎日新聞の電話取材に「私を乗せると重いので置いていくよう言ったが、娘は譲らなかった。誇りに思う」と感慨深げに語った。ジョティさんは「途中で多くの人から水や食料をもらい、助けられた。自転車の選手になりたいとは思っていないが、目の前のことには挑戦したい」と話している。【松井聡】