日本は感染爆発回避 医療は逼迫、脆弱さも露呈
国内の新型コロナウイルスの新規感染者数はこのところ大きく減少している。数十万~百万人規模の感染者を出した欧米諸国と比べても、日本は感染爆発を回避しつつ拡大を抑えた形だ。一方で脆弱な医療の実態もあぶり出され、経済対策でも遅れが目立つ。感染拡大の「第2波」の可能性は消えず、態勢の立て直しは急務だ。
国が緊急事態宣言の解除の目安で示した「人口10万人当たりの1週間の新規感染者数」は、東京では25日までで0.34人となった。4月中旬に8人台だったのに比べ、足元では感染を大きく抑え込んでいる。
欧米との比較でも日本の感染確認数の少なさは顕著だ。米ジョンズ・ホプキンス大の集計などから試算すると、ピーク時の10万人当たりの1週間の新規感染は米国で約66人、イタリア約65人、ドイツでも約48人に上った。これに対し日本は約2.9人にとどまった。
日本はPCR検査実施数自体が少ないために感染確認数も少ないという側面はある。それでも世界中で感染が急拡大したこの4カ月間を振り返れば、日本は少なくともオーバーシュート(爆発的な感染拡大)は回避し、一定の感染抑制を実現したといえる。
他方、日本の大きな問題の一つは、人口当たりの感染者数が少なかったにもかかわらず、医療現場が逼迫したことだ。
感染拡大局面では各地で病床が不足した。東京では永寿総合病院など中核的な病院で集団感染が相次ぎ、患者の転院先でも感染が拡大するといった事態に発展した。コロナへの対処に追われて他の急患への対応余力が失われ、救命救急も一時窮地に陥った。マスクやガウンなどの防護具も全国的に不足した。
最近になって新規感染が減り、退院も増えたことで病床の逼迫は解消されてきたが、第2波に向けた医療や検査の態勢不備は残ったままだ。
対応病床では、安倍晋三首相が掲げる「全国5万床」の目標に対し、流行ピーク時に利用できる見込みなのは約3万1千床にとどまる。ICU(集中治療室)も増設の動きはほとんどない。
PCR検査も、保健所を通さずに実施可能なPCRセンターの開設は進むものの、1日当たりの可能件数は今も2万件余と、他の先進国からは依然見劣りする。
東京医科大の浜田篤郎教授は、第2波のリスクが高まる時期が年内に3回あるとみる。「緊急事態宣言解除後の6月」と「入国制限の緩和後」、さらに「10月以降」だ。
浜田教授は「とりわけ秋や冬を迎える10月以降のリスクが高い」と指摘する。従来のコロナウイルスによる風邪が流行しやすい季節で、新型コロナも同様の傾向をみせる恐れがあるという。
切り札となるワクチン供給にはなお時間がかかる。感染のペースが落ち着いた今の「猶予」をいかに活用して態勢を再構築するかが問われる。