9月入学、首相「拙速避ける」 自治体からも慎重論
安倍晋三首相は25日の記者会見で、学校始業や入学時期を変える「9月入学」について拙速な議論は避け、慎重に検討する考えを示した。14日の記者会見などで「有力な選択肢の一つだ。前広に検討していきたい」と述べていた。
首相は会見で「私自身は有力な選択肢の一つと考えているが、与党では極めて慎重な議論もある」と語った。「社会全体への影響を見極めつつ慎重に検討していきたい。拙速は避けなければならない」とも話した。
自民党の9月入学に関するワーキングチーム(WT)が25日に実施した関連団体へのヒアリングも慎重な意見が目立った。
全国知事会の飯泉嘉門会長(徳島県知事)は「休校の長期化への不安の解消や子どもたちのグローバルな活躍に資する」と指摘した。そのうえで「就職の時期や行政、企業の会計年度なども含めて社会に幅広い影響を及ぼす」と強調した。
全国市長会は全市区長を対象に21~22日に実施した調査で、慎重・反対の回答が8割だったと明らかにした。回答数576のうち360が慎重、103が反対、104が賛成、9が保留だった。
「公立小中学校の設置主体である自治体の現場の意見を十分に聞いてもらう必要がある」など市区長の声も紹介された。
全国町村会は47都道府県の町村会長に9月入学の賛否を尋ねたところ、8割が反対だったとの結果を示した。「努めて冷静な議論と判断が求められる」と総括した。
日本若者協議会の高校生らは「小中高大一律の9月入学への移行は避けるべきだ」と要請した。性急に移行すると混乱をもたらすと訴えた。
WT座長の柴山昌彦前文部科学相は終了後、記者団に、6月初旬までに提言をまとめる考えを示した。提言は「両論併記でなく、政府として検討するにあたっての目印にできるような方向性を示したい」と強調した。
25日のWTは初めて自民党の全ての所属国会議員に参加を呼びかけた。
村井英樹事務局長は100人超の議員が出席し「30人程度から発言があった」と述べた。「社会も混乱しているなかで、ほとんどが秋季入学制度の導入に慎重、反対の意見だった」と説明した。
義務教育の開始を一部5歳にする案もあがった。「拙速に議論したり結論を出したりするものではなく国民の理解を踏まえた形で議論を深めていく性質のものだ」との声も合わせて出たという。
自民党のヒアリングは25日で5回目。週内にも全所属国会議員を対象に再び会合を開く予定だ。