こおりやま広域圏 連携地ならしの1年
台風でも支援 医療・交通面に課題
郡山市を中心とした16市町村による「こおりやま広域連携中枢都市圏」の取り組みが本格化して1年が過ぎた。ここまでの連携と、見えてきた課題を検証する。(井上大輔)
■周知や交流に手応え
広域圏の構想は総務省が2014年に導入した。地方都市の人口流出を抑えるため、政令指定都市や中核市が中心となり、さまざまな分野で近隣の自治体と連携して活性化を図る。
こおりやま広域圏は昨年1月、全国で29番目、県内では初の広域圏として発足し、その春から具体的な連携が始まった。昨年10月に二本松市も加わり、圏内人口は約65万人、県全体の34%となった。
発足時に策定した「都市圏ビジョン」では、観光や医療、教育などの事業で連携する方針を打ち出した。1年目に取り組んだのは、65事業のうち、若手職員らが地域課題の解決を目指す「チャレンジ『新発想』研究塾」や、学生がPR企画を考える「わかものボーダレスプロジェクト」など29事業。広域圏の調整役にあたる郡山市政策開発課の担当者は「初年度なので広域圏の周知や職員交流に力を入れた。手探りのスタートだったが、自治体同士の関係が深まり、今後の連携の地ならしができた」と進捗(しんちょく)に手応えを感じている。
象徴的だったのは昨年10月の台風19号だ。被害が出ると、自治体同士で職員を派遣し合い、物資を送って支え合った。大玉村と猪苗代町から職員の応援を受けた本宮市は「人手が全然足りず、非常に助かった。広域的な連携の大切さを痛感した」という。
■「職員派遣の余裕ない」
一方で、課題も見えてきた。
昨年度、研究塾は7市町、ボーダレスプロジェクトは6市町の学校の参加にとどまった。広域圏構想は自治体間の協約にもとづくため、参加に拘束力はない。古殿町の担当者は「職員数が少なく、緊急時のことなどを考えると、残念ながら交流のために郡山市に派遣する余裕がない」と実情を明かす。
医療や交通といった分野は自治体ごとに異なる事情を抱え、足並みをそろえること自体が難しい。救急医療の連携や潜在保育士の情報共有などは、まだ検討段階にとどまっている。
■小規模な連携も
新たな模索も始まっている。郡山市と近隣3町は今年4月に協定を結び、市内の病児保育施設を3町の住民も利用できるようにした。同市に通勤する人が職場から近い場所に子どもを預けられるメリットがある。
市政策開発課は「全ての構成市町村向けの共通の取り組みだけでなく、一部の自治体の小規模な連携を積み重ね、次第に広げることも検討したい」としている。