新型コロナで失われた1000人の生涯、NYタイムズの1面を埋め尽くす
(CNN) 米紙ニューヨーク・タイムズは24日の日曜版の1面の紙面を、新型コロナウイルスのために亡くなった死者の氏名で埋め尽くした。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による損失は計り知れない。しかし同紙は1面と中面の3ページを犠牲者1000人の名で埋め尽くすことにより、筆舌に尽くしがたいその状況を表現しようとした。
1面には写真もニュース記事も広告も一切掲載せず、「米国の死者10万人に迫る。計り知れない損失」という見出しの下に、死者の紹介だけでページを埋め尽くした。
専門家によると、中には自宅で死亡するなどして集計されないままの犠牲者もいることから、新型コロナウイルスの死者の数はもっと多い可能性もある。しかし確認された死者が10万人に近づく中で、同紙はこの数カ月の事態をどうすれば表現できるのかについて、デスクや記者の間で話し合ったという。
また、国家の緊急事態が数日から数週間、数カ月へと長引く中で、感覚の一部がまひして、数字が表す事態をのみこみにくくなっているのも現実だった。
そこで同紙は全米の新聞から、新型コロナウイルスによる死者の氏名と人物紹介を収集した。「この1000人は、全体のわずか1%しか反映していない」と同紙は指摘する。「誰一人として、単なる数字ではない」
何行にも何列にもわたって続く氏名は、それぞれの人が生きて、死んだ記録だった。
アンジェリン・ミハロプロス(92)。「歌や踊りを恐れなかった」
ライラ・フェンウィック(87)。「黒人女性として初めてハーバード・ロースクールを卒業」
ロミ・コーン(91)。「ユダヤ人一家56世帯をゲシュタポから救出」
エイプリル・ダン(33)。「障害者の権利保護を訴えた」
パトリシア・H・サッチャー(79)。「教会の聖歌隊で42年間歌唱」
フレッド・グレイ(75)。「ベーコンとハッシュブラウンが好きだった」
ハーレー・E・アッカー(79)。「スクールバスの運転手を始めて天職を見つけた」
フランク・ガブリン(60)。「夫の腕に抱かれて亡くなった救命救急医」
スカイラー・ハーバート(5)。「ミシガン州で最年少の新型コロナウイルスパンデミックの犠牲者」
フィリップ・カーン(100)。「第2次世界大戦の退役軍人。双子は100年前にスペイン風邪の流行で死亡」
ウィリアム・D・グリーク(55)。「人の生涯のストーリーを知ることが大切だと考えた」
損失は計り知れない。
ベテラン記者のダン・バリー氏は中面のコラムの中でこう記している。「想像してみてほしい。今年の新年には存在していた人口10万人の都市が、米国の地図から消滅してしまったと」