相談相手増えているのに…「いのちの電話」相談員、自粛で4割減
新型コロナウイルスの影響で、自殺を防ぐための電話相談「いのちの電話」が各地で態勢縮小や活動停止を余儀なくされている。感染拡大を受け、日々の生活や将来に不安がある人からの相談は増える傾向にあり、相談員らはもどかしい思いを抱えている。(林尭志、南佳子)
「コロナで相談相手を求める人は増えている。こんな時こそ、一本でも多くの電話を取りたいのに……」。長崎市の「長崎いのちの電話」で相談員を10年以上務める女性(70歳代)は肩を落とす。
主婦や会社員ら20~80歳代の80人余りがボランティアの相談員として登録している。感染拡大を受け、バスや鉄道などを利用する相談員に活動を控えてもらった結果、相談員は4割減った。1日4~6交代で活動するが、時間帯によっては相談員を置けず、受け付けられないこともある。
新型コロナ関連の相談は3月に52件と全体の5%程度だったが、緊急事態宣言が全国に拡大された4月は145件と2割に増加。長崎県の宣言が解除されて以降も減る傾向にない。「やっと見つけた仕事が休業要請でなくなった」「外出自粛で話し相手が一人もいない」といった内容で、自殺をほのめかすことも珍しくない。田村繁幸事務局長は「心苦しいが、相談員のそばにも、(ウイルスの)見えない脅威が迫っていることを考えると無理はできない」と話す。
福岡市の「福岡いのちの電話」にも新型コロナ関連の相談が相次いでいる。3月は25件だったが、4月は97件で、今月はさらに上回るペースという。「会社が倒産しそう。死ぬしかない」「夫がずっと自宅にいて家庭内暴力(DV)が怖い」という深刻な内容もある。
しかし、福岡県内の感染者が相次いだ3月下旬以降、約180人いる相談員のうち約30人が活動を自粛している。少人数での対応を余儀なくされ、4月の応対件数は878件と前月を100件余り下回った。河辺正一事務局長は「日常生活が戻らず、メンタルに不調を抱える人も多い。相談員は限られた人数だが、丁寧に対応していきたい」と語る。