九州の商店主ら、人出回復や経済活動再開に期待も「当面は厳しい」 宣言解除

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が25日、約1カ月半ぶりに全面解除された。仕事や観光による人の移動が激減したことで大きな打撃を受けてきた九州の関係者からは、人出の回復や経済活動の再開に期待する声の一方、「当面は厳しい」と慎重な見方も広がった。

名物の屋台再開も「観光客戻るのはまだ先」

 福岡市の名物として親しまれ、観光客にも人気の屋台は、14日に福岡県で緊急事態宣言が解除されて以降、営業を再開する店が出てきた。カウンターと調理場をビニールシートで仕切るなどの感染防止策を取るが、客足の回復はなかなか見通せない。

 天神地区にある、チャーハンなど中華料理が売りの「宗(むね)」は22日から営業を再開したが、常連客以外はほとんど来ないという。大将の山川和紀さん(51)は「(新型コロナの流行前は)観光客が多かったが戻るのはまだまだ先だろう。年内は厳しいと覚悟している」と話す。焼き鳥などを売る「那須乃大八」店主の阿高正美さん(64)は「感覚を忘れそうだから」と25日に営業を再開したが、「(感染の)第2波が怖い。資金繰りが厳しく借り入れもしたが、また長期間休むとなるともう店を畳むしかない」と嘆いた。【平塚雄太】

減便で閑散とする福岡空港

 九州の空の玄関口、福岡空港(福岡市博多区)。新型コロナの影響で減便が続き閑散とする国内線出発ロビーで、埼玉県から出張で訪れていた建設会社の男性社員(45)は「現場を見なければ進まない話もあるので、移動自粛の緩和が進めば仕事がしやすくなる」と歓迎し「オンラインの会議も引き続き活用しながら、これまでの遅れを取り戻したい」と話した。

 福岡銘菓などを販売する「大丸エアポートショップ」は4月17日から臨時休業中だが、宣言解除を受け6月初旬にも営業再開を見込む。運営する博多大丸(福岡市)の担当者は「宣言解除で人通りが戻ることを期待したい」と話した。

 もつ鍋などを扱う「博多しゅん家」は、全国で感染が拡大した3月中旬から、営業時間を短縮。その後の売り上げは通常の1割以下で、店長の渡辺俊介さん(26)は、他の従業員3人を休ませ、毎日1人で店に立つ。宣言の全面解除に「早く人出が戻ってほしいが、かなりの時間がかかるのでは」と厳しい見方を示した。【平川昌範】

長崎のホテル、修学旅行キャンセル相次ぎ苦境続く

 例年は県外からの修学旅行生らでにぎわう長崎市のホテルは苦境が続く。首都圏からの客も多い長崎スカイホテルの塚島宏明副社長は「解除をきっかけに客足が戻ればうれしい」と期待する。

 新型コロナの感染拡大で修学旅行のキャンセルなどが相次ぎ、4月の宿泊者は前年同月比で95%減った。市旅館ホテル連合会によると、同会に加盟する43施設のうち30施設は今も休業中で、影響は深刻だ。

 塚島副社長は「回復には時間がかかると思うが、今後はバイキング方式での食事はやめるなど『新しい生活様式』にも対応していきたい」と話した。【今野悠貴】