「観光客まだ来ないだろう」 北陸などの観光地 緊急事態全面解除も不安残る

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 緊急事態宣言の全面解除を受け、北陸新幹線で首都圏とつながる石川県では、ビジネス客から増え始めると期待する声の一方、「観光の客足が戻るのはまだ先」との見方も少なくない。

 金沢駅前の大型ホテルでは、石川を含む39県で宣言が解除された14日を境に予約は増えたものの、担当者は「以前よりはまし、という程度。観光客はまだ来ないだろう」とため息をつく。県は県境を越える移動の自粛を引き続き求めており、国の特別名勝「兼六園」や金沢21世紀美術館も休園・休館が続く。

 建設業者の利用が多いビジネスホテルの支配人は「比較的早期の回復が望める」と予想する。ただ、金沢市内では値下げ競争が起きてホテルや旅館に泊まりやすくなっているといい「(元々安価な)ゲストハウスなどは厳しいだろう」と見る。

 富山県立山町から長野県大町市までバスやケーブルカーを乗り継いで北アルプス観光を楽しむ「立山黒部アルペンルート」は6月1日に運行を再開する。今年は除雪後の4月15日に一度全線開通したが、首都圏などから訪れる団体客が全てキャンセルとなった上、同16日に宣言が全国に拡大され、3日間営業しただけで休止に追い込まれた。

 運営会社「立山黒部貫光」は乗り物の定員を減らし、切符売り場や乗車前に並ぶ客に間隔を空けるよう呼び掛ける。密集を避けるため、雪壁の間の散策などのイベントは全て中止した。担当者は「観光客がすぐに増えるとは思っていない」と慎重だが「十分な感染対策をして迎えたい」と話す。

 東京と空路で結ばれる鳥取県。羽田―鳥取便が1日5往復、羽田―米子便は6往復あったが、段階的に減便され、4月17日からは1往復になった。県観光戦略課によると、4月1日~5月15日の乗客数は鳥取空港が2817人、米子空港は4653人で、昨年の5~6%にとどまった。

 鳥取空港がある鳥取市の鳥取砂丘近くにあるレストラン兼土産物店「砂丘フレンド」の山根弘司代表(60)は「宣言解除そのものは歓迎する。観光客は自己管理を万全にして砂丘や食を楽しんでほしい」と話すが、県が県境をまたぐ旅行を避けるよう呼び掛けているだけに心境は複雑な様子。米子空港がある境港市の観光地「水木しげるロード」に面した文具店経営、新田隼子(じゅんこ)さん(78)は「徐々に観光客が増えると思う。ここに来たいお子さんが全国にいるはず」と期待した。【近藤幸子、砂押健太、阿部絢美、柴崎達矢】