コロナの情報、多言語で発信 東京外大生らサイト運営
新型コロナウイルスに関する情報を日本に住む外国人に発信しようと、東京外国語大の学生や卒業生らが「COVID-19 多言語支援プロジェクト」を立ち上げた。主に首都圏の行政発表や報道を13言語に翻訳し、専用のウェブサイトに掲載。「不安を抱える外国人に情報を届けるとともに、社会の在り方を考えるきっかけをつくりたい」と意気込む。
代表の石井暢さん(24)は3月にフランス語専攻を卒業した。感染が広がる中、ビザの効力が停止された留学生の友人から相談を受け、「命や生活に関わる情報が十分に得られないのは相当なストレス。行政のマンパワーには限界がある」との思いを持った。
4月21日、友人らとともにサイトを開設した。感染予防策から、ビザや給付金手続きといった情報を首都圏中心に幅広く集め、問い合わせ先も紹介。外国人からも「子どもがオンライン授業になり困っている」「自分が感染したらどうすればいいか」といった声が寄せられ、不安や情報不足の現状が浮かび上がった。
サイトは「やさしい日本語」、ベトナム語、スペイン語などに対応。学生ら約70人のボランティアが運営や原稿執筆、翻訳を分担する。手続きに必要な「はんこ」の役割を説明するなど、文化的な違いにも気を配る。
東京外大は留学や留学生との交流が盛んで、語学を生かし力になりたいと考える学生も多い。感染拡大で留学を断念しながらも、「自分にできることを」と手を上げた人もいる。得意言語もさまざまで、広くニーズを拾い上げられることも強みだ。
コロナ禍は、同じ社会に生きる一員なのに、外国人へ十分な情報が行き渡らないというひずみを改めて浮き彫りにした。石井さんは「サイトの運営がゴールではない。活動を通じ、非常事態にこそ彼らに目を向けられるような社会の在り方を提起したい」と話している。〔共同〕