コールセンターで「3密回避」 休業中ホテル借り切ったジャパネットの一石二鳥

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 新型コロナウイルスの感染を防ごうと、通販大手ジャパネットホールディングス(長崎県佐世保市)は休業中のビジネスホテルを借り切り、注文を受け付けるコールセンターの業務場所に充てている。従業員1人に1部屋を割り当てて感染リスク低減を図っており、宿泊客の減少に悩むホテル業界からも歓迎の声が上がっている。

 多くのオペレーターが電話口で顧客と話すコールセンターは、密集場所で密接場面になりやすく、現場から不安の声が上がる企業も多い。ジャパネットは主力コールセンターを置く福岡市で、4月下旬から休業中のホテル3棟(計260室)を借り切った。各部屋に専用のパソコンや通話装置を配備し、それぞれの近隣に住む社員やアルバイトが出勤している。この体制を6月末まで続ける。

 感染が拡大した時期に、ジャパネットは持病のある人や妊婦らのコールセンターへの出勤を取りやめた。インターネットからの注文にクーポン券を発行する特典を設け、コールセンターで働く従業員を約6割に減らしていた。更に業務場所を分散したことで、本来のコールセンターも人が少ない状態で勤務できるようになった。広報担当者は「コールセンターの業務継続に加えて、地元のホテル業界に貢献したいと考えた」と話している。

 福岡市では訪日外国人の増加に合わせてホテルの建設ラッシュが起きていたが、新型コロナの流行で稼働率が急激に落ち込み、緊急事態宣言が発令された4月からは臨時休業が相次いだ。ジャパネットの取り組みについて、福岡市でホテルを展開する企業の社長も「ホテルを業務場所にする企業が増えてほしい」と歓迎している。

 コールセンター業務を巡っては、東京都内にある通信会社の拠点で従業員らの感染も確認されている。SNSには、勤務の苦痛や不安を訴える書き込みも多い。外資系のチューリッヒ保険は電話対応業務の大半を在宅勤務に切り替えたが、こうした企業は珍しい。「個人情報を扱うのでセキュリティーの問題が大きい」(金融機関関係者)として、テレワークに難色を示す企業も多い。【久野洋】