フジテレビは「木村花さん死去」どう報じた 初報は2日経って...各局ワイドショーに差
女子プロレスラーの木村花さんが22歳で急死したことは各界に大きな衝撃を与え、連日報道が続いている。
木村さんはフジテレビが共同制作する恋愛リアリティ番組「テラスハウス」に出演しており、出演中の言動をめぐってインターネット上で誹謗中傷に晒されていた。フジテレビは木村さんの死をどう報じたか。他局と放送を見比べると、対応が割れた部分もあった。
Netflixでネット配信、フジテレビでテレビ放送
女子プロレス団体「スターダム」は2020年5月23日13時ごろ、所属する木村さんが同日亡くなったことを伝えた。「突然のことでファンの皆様、関係者の皆様には深いご心配と、哀しみとなり、大変申し訳ございません」とし、「詳細につきましては、いまだ把握出来ていない部分もあり、引き続き関係者間の調査に協力してまいります」と死因が明らかになっていないことを明かした。「木村花選手のご冥福を深くお祈り申し上げます」と追悼し、「今後につきましてはご親族と相談の上、お知らせいたします。また他の所属選手の心のケアにも努めてまいります」と方針を示していた。
木村さんは出演中の「テラスハウス TOKYO 2019-2020」での言動をめぐり、5月半ばごろからツイッターやインスタグラムなどで誹謗中傷に晒されていた。23日未明にはインスタで「ごめんね」「さようなら」などと投稿しており、直後から多くのファンが心配する声を寄せていた。
「テラスハウス」は男女6人のシェアハウスでの共同生活を映した番組で、フジテレビが制作に携わり、Netflixでのネット配信とともに同局でテレビ放送もされている。番組は公式サイトで23日、追悼コメントを掲載し、直近で予定していた配信と放送を中止した。訃報は大きな衝撃を与え、新聞の全国一般紙やスポーツ紙でも23日から各社報じた。
フジテレビの報道番組を確認したところ、23~24日は木村さんの訃報を伝えたものは確認できなかった。同局は土日両日とも夕方の30分番組「FNN Live News it!」といった報道番組を持っているが、報じなかった。日曜は22時から「Mr.サンデー」を放送しているが、24日放送では75分間の放送で触れられなかった。
25日の「めざましテレビ」で報道
23~24日の土日の他局では、NHKが24日の「ニュース7」などで木村さんが亡くなったことを報じた。同番組では、テラスハウス出演に関するSNS上の非難について、海外大手メディアも次々と報じていることなどを交えた。
日本テレビも24日の「真相報道バンキシャ!」で報道。木村さんと親交が深い女子プロレスラー・長与千種さんがツイッターに投稿した悲しみと怒りのコメント、またサッカー元日本代表の本田圭佑選手ら各界の有名人が、誹謗中傷について自身のSNSで発言していることも伝えた。その後、ゲストの社会学者・古市憲寿氏、スポーツコメンテーター・為末大氏らが自身の見解を述べた。
TBSでは24日の「サンデー・ジャポン」で取り上げ、スタジオではSNSにおける誹謗中傷について議論。「爆笑問題」太田光さん、タレントの岡田結実さんや壇蜜さんらが悲痛な思いを明かしている。テレビ朝日では土日の報道は確認できなかった。
週が明けて25日になると、フジテレビは朝の「めざましテレビ」で木村さんの訃報を伝えた。VTRでスターダムや「テラスハウス」の発表コメントを紹介し、「木村さんのSNSなどには、番組の出演や、番組内の発言をめぐり、誹謗中傷する内容の多くの投稿が。その中には、番組降板を求めるものや、彼女の存在自体を否定するような内容まであったといいます」と、誹謗中傷の声にも触れた。その後の長与さんや本田選手らのツイート紹介、海外メディアでの扱いといった内容は、前出の他局報道と同様。
また、VTRでは「去年11月、元『KARA』のメンバー、ク・ハラさんがネット上の誹謗中傷による精神的ダメージなどから自殺したとみられています」と過去の訃報も紹介したほか、「インターネット上での名誉毀損について、法務省のデータでは、平成25年から29年までの間に相談件数が倍以上」とデータを引き、SNSの改善点に関する専門家のコメントを放送した。最初に6時台に報じた後、7時台にもう一度同じ内容のVTRを流している。
25日のワイドショー、3局が20~30分、フジは5分
民放の在京4キー局では、平日8時からワイドショーを放送しているが、フジテレビ以外の3局は25日、木村さんの訃報を大きく取り上げた。
日本テレビ「スッキリ」では、冒頭から約35分間扱った。スタジオトークでは「ハリセンボン」近藤春菜さんらがコメント。MCの「極楽とんぼ」加藤浩次さんは「相手の心を削りにいく言葉を発する人間は減るのか。啓蒙することは簡単だけど、いなくなるのか。そういう人間は取り締まらないといけないんじゃないのか。SNSでは基本的に何を言ってもいいと思ってる。でも相手の自尊心を傷つける言葉だけは絶対にダメだ」と語気を荒くして憤った。
TBSの「グッとラック!」も冒頭から20分以上取り上げ、スタジオでのコメンテーターらによる議論に時間を割いた。自身も積極的にツイッターで発信しているMCの立川志らくさんは「ほとんどの方々はそんなこと(誹謗中傷)しない。する人は想像力もないし理解しないし人の心がないから言葉で言っても刺さらない。本当は厳罰化するしかない。分からない人には罪を与えて抑える」「表現者は『私はこう思う』と発信する。そこで生まれる良いものはたくさんあるのに、ほんの数%変なのが来る。そのために(SNSを)やめちゃうのはもったいない」とSNSの利点と改善点を語った。
テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」は9時すぎから30分以上取り上げ、ネット上の誹謗中傷に関する裁判を手がけてきた弁護士も招いて出演者らが議論した。テレ朝コメンテーターの玉川徹氏は「著名人はみんな誹謗中傷を受けた経験をしていると思う。ある種の有名税だからしょうがないとか、いちいち反応しないのが強さだといって見逃してきた部分が大きいと思う。すると誹謗中傷する人にとっては、法的措置をとられることはないと安心している部分もあるだろう。著名人がある種見逃してきたことが、結果的にそうした風潮を助長したことにもつながっているのでは。名前が通っている人は社会的な意味でも、放置しないことも重要じゃないか」との見解を示した。
フジテレビの「とくダネ!」では、番組後半の9時30分ごろから約5分間、前出「めざましテレビ」とほぼ同じ内容のVTRで、木村さんの訃報を伝えた。その後、スタジオで伊藤利尋アナウンサーがフジテレビのコメントを読み上げ、次の話題に移った。スタジオで出演者らによるトークはなかった。