米新型宇宙船打ち上げへ 9年ぶり有人、初の民間委託 今年後半に野口さん搭乗か

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 米国による宇宙船での有人飛行が2011年のスペースシャトル引退以来、9年ぶりに再開される。米スペースX社と米航空宇宙局(NASA)が日本時間28日午前5時33分、新型宇宙船「クルードラゴン」を打ち上げ、NASAの宇宙飛行士2人を国際宇宙ステーション(ISS)に運ぶ。ISSへの人の輸送を民間が担うのは初めてで、商業化が進む宇宙開発の転換点にもなりそうだ。

 今回は最後の「試験飛行」との位置づけ。成功すれば今年後半にも最初の「本番ミッション」が実施される予定で、野口聡一宇宙飛行士(55)が搭乗する。このため日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)も慎重に安全性を評価する。

 今回の打ち上げは米フロリダ州のケネディ宇宙センターからスペースXのファルコン9ロケットで実施され、約19時間後にISSに到着してドッキング。飛行士2人はISSに1カ月~3カ月半滞在し、再びクルードラゴンに乗り、パラシュートを開いてフロリダ沖の海上に帰還する。

 1981年から30年間、稼働したスペースシャトルは大型で、2回の死亡事故の影響でコストが高騰し、退役を余儀なくされた。これ以降の飛行士の輸送手段が露ソユーズ宇宙船に限られた一方、米国は複数の企業を競わせ、コストを抑えながらシャトルの後継機開発を促していた。今後はISSへの輸送は民間に委託し、NASAが飛行士の座席を購入する形式に移行する。NASAのブライデンスタイン長官は「NASAは顧客の一つになる」と強調する。

 スペースXは12年以降、ISSに物資を運ぶ無人機「ドラゴン」で19回の補給実績を持つ。改良したクルードラゴンはカプセル型宇宙船で、通常は全自動でドッキング可能。昨年3月には無人でISSへのドッキング試験に成功した。

 今回は過去に2回スペースシャトルで任務についたロバート・ベンケンとダグラス・ハーレーの両ベテラン宇宙飛行士が搭乗し、ドッキングの一部を将来の緊急時に備えて手動操作で試す計画だ。5月2日(日本時間)の記者会見でベンケン飛行士は、タッチパネル式の操作について「私たちが慣れ親しんだものと異なる」としながらも「より安全な設計だ」と強調。ケネディ宇宙センターからの打ち上げで「フロリダの海岸に有人宇宙飛行を復活させる」と意気込んだ。【池田知広】