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アングル:市場にコロナバブルの声、実体経済と乖離 過剰流動性相場

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水野文也

[東京 25日 ロイター] - 株価と実体経済のギャップが大きくなった現在の相場を「コロナバブル」と呼ぶ声が増え始めた。株価は半年後、1年後を織り込むと言われるが、それだけでは説明がつかないほど、両者のかい離が大きくなっているためだ。今の株高の原動力は金融緩和や財政支出などの経済政策。今後、株価の上昇が続くとしても、それは過剰流動性相場とみる関係者が多い。

緊急事態宣言がようやく全国的に解除される見通しだが、消費などの大きなダメージが残り、経済が元に戻るとの見方は少ない。日本の実質国内総生産(GDP)は1─3月1次速報の年率マイナス3.4%に続き、4─6月期は戦後最悪となるマイナス20%前後の落ち込みになるとの見通しもある。

しかし、日本株は大きく反発。日経平均<.N225>は3月19日の底値から、25日の高値まで約4354円(26.6%)の上昇。東証マザーズ指数<.MTHR>は3月安値から81%上昇し、「コロナ前」の2019年5月の水準に達している。

市場では「GDPは7─9月期に大きく反発する可能性がある。しかし、消費は完全に戻らず、その後は緩やかな回復になりそうだ。景気回復を織り込む今の株高はやや楽観的すぎる」(外資系証券エコノミスト)との見方は少なくない。

企業決算も見通しが立たない。直近の決算発表では、3月期決算企業の6割以上が今期の見通しを未定とした。前週末のPBR(株価純資産倍率)は解散価値の1倍水準だが、企業が今後、利益剰余金の取り崩しに走れば、それも怪しくなる。

<個人投資家の買い>

足元で目立つのは、個人投資家の買いだ。東証が発表した5月第2週の投資部門別売買状況で、海外投資家が1296億円の売り越しとなる中で、個人は1882億円と買い越し額が突出している。

岡三オンライン証券・シニアストラテジストの伊藤嘉洋氏は「今の個人投資家の買いは、過去に何度か起きたバブルの時を思い起させる。新規の顧客が増え続けており、それからすれば株価は下がらない」と話す。

1998─2000年にかけて起きたITバブルでは、個人の買いが株価上昇の原動力になった経緯がある。その際、投資マネーに流用されたのが、当時の金融機関の貸し剥がしから中小企業を救うため98年に施行された、中小企業金融安定化特別保証制度だ。無担保で5000万円まで保証をした同制度から株式市場に少なからずの資金が流入したとの見方が市場ではもっぱらだ。

当時、投資顧問会社を経営していた中小企業のオーナーは「困っていないのに借り入れして、自家用車を外車に買い替えたほか、当時急騰していたIT関連株で儲けて返済しようと目論む人が1人や2人ではなかった。今後の経済対策で似たような施策が打ち出されるのであれば、同じことが起きると思う」と証言する。

<ITバブルの再来か>

一方、海外勢が今のところ日本株を見送っていることについて「市場にGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの米大手IT4社)がないのが最大の理由」と三菱UFJモルガンスタンレー証券・チーフ投資ストラテジストの藤戸則広氏は分析する。

米国株式市場では既に、ナスダック指数が2月最高値から85%以上の戻りを演じているが、リードしたのは、いわゆるGAFAなどテクノロジー企業だ。

藤戸氏は「日本株も堅調を保てば組み入れざるを得なくなることから、やがて海外のハイパーマネーが流入してくる。それが『おこぼれ』の形であっても株価にインパクトを与えそうだ」とみている。

個人と海外勢の買いが合わされば「かつてITバブルの時のような状況が先行き起きる可能性が十分ある」と、東海東京調査センター・シニアストラテジストの中村貴司氏は指摘する。

歴史上、バブルの背景には、必ずと言っていいほど緩和的な経済政策がある。今回も、未曽有の金融緩和と財政支出により、大規模なマネーが生み出されている。「当面は各国の空前規模の施策によって生み出されたジャブジャブの余剰資金が、世界中のマーケットで滞留する可能性がある」(国内証券)との見方は少なくない。

今後も実態からかけ離れる形で株価が上昇するようであれば、「コロナバブル」、「第2ITバブル」、「GAFAバブル」などと呼ばれる可能性が大きい。どの呼称が定着するかはわからないが、いずれにせよ、過剰流動性相場的な様相を強めることは間違いなさそうだ。

(編集:石田仁志)