リニア未着工問題「工程は切迫」 静岡県とJR東海、トップ会談実現するか

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 未着工のリニア中央新幹線静岡工区を巡り、静岡県の川勝平太知事とJR東海の金子慎社長のトップ会談が実現するかが注目されている。2027年に品川―名古屋間の開業を目指す金子社長は「工程は大変、切迫した状況」と準備工事について直接、説明する機会を望む。川勝知事は「面談はやぶさかではない」との姿勢で、次回の第3回有識者会議(事務局・国土交通省鉄道局)の終了後に会談を受けるかどうか判断する。【山田英之】

 静岡工区は県や大井川流域10市町などの理解が得られておらず、着工の見通しが立っていない。県とJRの協議も難航、27年の開業は極めて厳しい状況だ。川勝知事と金子社長との関係は良好と言い難い。金子社長は過去に3度、トップ会談を申し入れているが、いずれも断られている。

 良好と言えない関係は、4月の有識者会議の初会合で露呈した。金子社長は「南アルプスの環境が重要だからといって、あまりに高い要求を課して、達成できなければ、着工も認められないというのは、法律の趣旨に反する」と県の姿勢を厳しく批判した。

 これに川勝知事は猛反発。島田市などの流域10市町、大井川土地改良区などの利水関係団体と連名で「水資源や自然環境へ影響を与える事業を行う者としての自覚と責任感に欠けている。地域としては受け入れがたい」と国交省に抗議文を提出する事態になった。

 国交省や有識者会議も金子社長の発言を問題視し、反省を促したため、金子社長は5月20日、「申し訳なく、重く受け止めています。会議に真摯(しんし)に対応し、地域の心配の解消に取り組みます」と川勝知事に文書で謝罪。27年の開業に触れて「目標を何としてでも達成する必要がある」とトンネル本体工事に入る前段階の準備工事について直接の説明を申し入れた。

 会談の実現は、リニア工事による大井川の流量減や地下水への影響を懸念する流域10市町の意向も鍵を握る。川勝知事は流域10市町や利水関係団体との関係を「ワンチーム」と表現する。トップ会談について金子社長に返答した文書で、次回の有識者会議で発言を謝罪、撤回することを前提に関係者と相談して返事をするとの考えを示した。

リニア有識者会議の経過

1月 県と国交省が有識者会議の設置に合意

3月 国交省が有識者会議の委員案を県に提示

   県は「中立公正性に疑義がある」と国交省に回答

4月 県が公募で選んだ2人を有識者として国交省に推薦

   有識者会議の初会合。県推薦候補は不採用。JR東海社長が県を批判

5月 県と流域10市町などが社長への抗議文を国交省に提出

   第2回有識者会議で座長が社長の発言に苦言

   社長が文書で知事に謝り、トップ会談を要請

   知事が第3回有識者会議後に返事をすると社長に返信