デモに新型肺炎追い打ち 香港経済、逆風続く 10年ぶりマイナス成長
by 毎日新聞香港経済が強い逆風にさらされている。2019年はリーマン・ショック直後の09年以来、10年ぶりにマイナス成長に転落。今年に入り新型コロナウイルスによる肺炎拡大が消費や観光を直撃しており、下押し圧力は強まるばかりだ。
香港政府が発表した19年の実質成長率は前年比でマイナス1・2%。大規模デモによる混乱に加え、米中貿易戦争に伴う輸出入の不振も響いた。
アジアを代表する金融センターとして発展してきた香港だが、1997年の中国返還以降、中国本土への経済依存が急速に深まっている。域内総生産(GDP)規模では既に上海、北京に引き離され、18年には隣接する深圳にも逆転された。中国本土の経済力・産業力が急速に強まる中、本土からの観光客による消費や、中国企業による投資など「中国マネー」が香港経済を下支えしているのが実態だ。
しかし、19年6月以降の大規模デモの激化で観光客の約8割を占める本土からの来訪者が激減し、小売業や観光業を直撃。企業などの投資も前年比12.2%減と失速した。大規模デモの過激化はここにきて収束の兆しを見せているが、今度は新型肺炎の影響が深刻化している。
香港政府は今月4日、空港など3カ所を除き中国本土との出入境施設を封鎖。8日以降は本土からの来訪者全員を14日間にわたり強制的に隔離する措置を始めており、ビジネスでの往来も難しくなっている。ディズニーランドが1月26日から閉園の措置を取るなど観光面でも打撃が広がっている。
香港では02~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)で299人の死者を出した。新型肺炎への市民の危機感は強く、医療関係者が本土との境界を全面封鎖するよう求めてストに踏み切るなど、混乱がさらに拡大する恐れもある。
「香港経済の低迷は長期化する可能性が高い」。市場ではこうした見方が強まり始めた。香港は中国企業が海外から資金を調達する「窓口」ともなっているだけに、香港経済の混乱が金融分野にまで拡大すれば、中国経済にとっても深刻な下押し要因となりかねない状況だ。【北京・赤間清広、台北・福岡静哉】