ブラッド・ピットのオスカー初受賞から気づく無冠のハリウッドスターたち

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小走りでオスカー像を受け取りに行っちゃうブラピ、かわいいっ! - Kevin Winter / Getty Images

 第92回アカデミー賞授賞式で、ブラッド・ピットが助演男優賞を受賞すると会場内は大いに盛り上がり、笑顔のブラッドに拍手喝采が送られた。1987年にキャリアをスタートし、『セブン』『オーシャンズ11』『ワールド・ウォー Z』など数々のヒット作に恵まれていたからこそ、56歳にして悲願の初受賞はファンにとってはうれしいと同時に意外に思えた人もいるのではないだろうか。実はハリウッドにはブラッドのように人気と実力を兼ね備えているのに、まだオスカー像を手にしていないスターたちが多い。

【写真】元妻ジェニファー・アニストンの手を握るブラピ

 ブラッドが初めてアカデミー賞にノミネートされたのは、1995年『12モンキーズ』で演じた精神病患者のジェフリー・ゴインズ役だった。だが、この年は映画『ユージュアル・サスペクツ』で圧巻の演技を見せたケビン・スペイシーが受賞。その後、2008年、2011年にもノミネートされるが受賞は逃した。一方、プロデューサーとしての才能は早くからハリウッドで認められ、2006年に元妻のジェニファー・アニストンとともにプロデュースに名を連ねた映画『ディパーテッド』はその年の作品賞を含む4部門を制覇。2013年の『それでも夜は明ける』、2016年の『ムーンライト』もまた社会問題を真っ向からとらえ作品賞を受賞した。彼の映画界に置ける輝かしい功績を振り返っても、ブラッドにとってアカデミー賞は近くて遠い存在だったはずだ。

 ブラッドのほかにも数々のヒット作に出演していながら、いまだオスカーを手にしていない俳優も多い、理由の一つにその年のライバルたちが素晴らしかったことが挙げられる。トム・クルーズは、主演男優賞にノミネートされた『7月4日に生まれて』では『マイ・レフトフット』のダニエル・デイ=ルイス、『ザ・エージェント』では『シャイン』のジェフリー・ラッシュ、助演男優賞にノミネートされた『マグノリア』では『サイダーハウス・ルール』のマイケル・ケインと名だたる名優たちが受賞した。主演男優賞に3度ノミネート経験のあるジョニー・デップも『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』では『ミスティック・リバー』のショーン・ペン、翌年の『ネバーランド』では『Ray/レイ』のジェイミー・フォックス、『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』では『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のダニエル・デイ=ルイスとまさに強敵ぞろいの中で受賞を逃している。どの映画も素晴らしいからこそ、あと一年ズレていたら、受賞できたかもしれない結果となっている。ほにも、ウィル・スミスマット・デイモン(脚本賞は受賞済)、ヒュー・ジャックマン、ベテラン勢ではハリソン・フォードジョン・マルコヴィッチなどもアカデミー賞は無冠のままだ。だが無冠とはいえ、全員がそれぞれの作品で素晴らしい演技を見せてきた名優であり、オスカーもその年のノミネート作品によってだいぶ違ってくることも確か。

 俳優にとって輝かしい名誉であるオスカー像。ブラッドはもちろん、2016年に『レヴェナント:蘇えりし者』で5度目のノミネートで主演男優賞を受賞したレオナルド・ディカプリオのように、悲願の受賞となれば俳優にとってもファンにとっても喜びは何倍も大きくドラマティックなものになる。今年はアジア勢で初めての受賞となった映画『パラサイト 半地下の家族』のエポックメイキングな受賞など、多くの映画ファンをざわつかせたアカデミー賞となったが、来年もまたどんなドラマが待ち受けているのか。映画のようなドラマにあふれた、映画の祭典アカデミー賞授賞式を来年もまた期待したい。(森田真帆)